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見えざる人(チェスタトン)のあらすじ・登場人物

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  • ミステリ
  • 翻訳

チェスタトン 訳者 直木三十五 1930年(昭和5年)

文字数
16,791字
読了目安
約34分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

チェスタトンが1911年に発表し、『ブラウン神父の童心』(同年)に収められた短編(原題「The Invisible Man」)。ロンドンの菓子屋の娘ローラは、かつて同時に求婚してきた二人の男に怯えている。一人は機械仕掛けの召使い人形で財をなした小男スミス、もう一人は消息の知れない藪睨みのウェルキンである。スミスのもとにも脅迫状が届き、青年アンガスは、元泥棒で今は探偵のフランボーとその友人ブラウン神父に助けを求める。見張りに囲まれた高層アパートという舞台で、人の目が何を見て何を見落とすかが謎の中心になる。ブラウン神父ものを代表する一編として知られ、首のない機械人形の並ぶ部屋の描写が印象を残す。直木三十五の訳で、1930年刊の平凡社『世界探偵小説全集』第九巻「ブラウン奇譚」に収録された。

あらすじ

青年アンガスは菓子屋の給仕女ローラ・ホープに求婚する。ローラは、昔父の料理屋に通っていた二人の変わった男から同時に求婚され、自分の力で世に出た人でなければと断った過去を打ち明ける。一人は小男アインドール・スミスで、いまは「スミス式雇人いらず」という機械仕掛けの召使い人形で成功している。もう一人の藪睨みのウェルキンは消息不明だが、ローラは誰もいない街角で彼の笑い声や声を聞いたという。そこへスミスが現れ、菓子屋の飾り窓に「スミスと結婚するならスミスを殺す」と書いた紙が貼られているのを示す。スミスのアパートにも脅迫状が届いていた。アンガスはスミスを最上階の部屋に残し、門番・使丁・巡査・栗売りの四人に入口を見張らせて、探偵フランボーとブラウン神父を呼びに行く。戻ると四人は誰も入らなかったと断言するが、雪の上には足跡があり、部屋には血だまりだけが残ってスミスの姿は消えていた。やがてスミスの死体が下の運河で見つかる。ブラウン神父は、人は問われた意味にしか答えないと語る。見張りたちは「怪しい人間」は来なかったと言ったのであって、誰も来なかったわけではない。ローラが手紙を受け取ったときも、そばには必ず手紙を運んだ者がいたはずだ。犯人は誰の目にも入らない郵便配達夫で、スミスを殺し、死体を大きな郵便袋に入れて運び出していた。神父が通りがかった配達夫の肩に手をかけると、振り向いたその顔はひどい藪睨みだった――ウェルキンである。神父は雪の丘を、殺人者とともに幾時間も歩き続けた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 ロンドン・キャムデン町なる二つの急な街の侘しい黄昏の中に、角にある菓子屋の店は葉巻の端のように明るかった。あるいはまた花火の尻のように、と言う方がふさわしいかもしれない。なぜなら、その光は多くの鏡に反射して、金色やはなやかな色に彩どられたお菓子の上におどっていた。この火の様な硝子に向って多くの浮浪少年等の鼻が釘づけにされるのであった。あらゆるチョコレートはチョコレートそれ自身よりも結構な赤や金色や緑色の色紙に包まれていた。そして飾窓の大きな白い婚礼菓子は見る人に何となく縁の遠いようにも見えまた自分に満足を与えるようにも見えた。ちょうど北極はすべて喰べるにいいように。こうした虹のような刺戟物に十一二歳くらいまでの近所の小供を集めるのは当然であった。しかしこの街角はまた年を取った若者にとっても魅力があるのであった。さてもう二十四にもあろうという一人の青年がその店の窓をのぞきこんでいた。彼にも、また、この店はもえるような魅力であった。しかしこの引力はチョコレートのみでは説明されるわけではなかった。と言って彼はチョコレートを軽蔑しているわけではなかったが。

「見えざる人」チェスタトン(青空文庫)

末尾部(原文より)

 フランボーは、サーベルや紫の敷物やペルシャ猫等色々の物が待っている彼の室に帰った。ジョン・タンボール・アンガスは店に彼を待ってるローラの許に立ちかえって、共にその無謀な青年はその女と共に極めて居心地のよいように何んとか工夫する。だがしかし師父ブラウンはキラキラと星に照されている雪におおわれた真白な丘を、殺人者と共に幾時間も歩き続けた、そして二人がお互に何を話したか。それは知る事は出来ない。

「見えざる人」チェスタトン(青空文庫)

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