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金の十字架の呪い(チェスタトン)のあらすじ・登場人物

墓所に眠る呪いの十字架

  • ミステリ
  • 翻訳

チェスタトン 訳者 直木三十五 1930年(昭和5年)

文字数
24,668字
読了目安
約49分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

チェスタトンのブラウン神父もので、第三短編集『ブラウン神父の不信』(1926年)に収められた短編(原題「The Curse of the Golden Cross」)。アメリカから英国へ渡る客船で、ビザンティン考古学の権威スメール教授は、ブラウン神父にだけ秘密を打ち明ける。自分が持つ魚の印の金の十字架をめぐり、顔も名も知らない男に長年つけ狙われているというのである。同じ印の十字架がサセックスの古い墓所で見つかったと聞き、一行は海辺の村を訪れる。素性の怪しい同船客たち、中世の呪いの伝説、薄暗い地下の礼拝堂と、ゴシック風の道具立てがそろう。大西洋上の食卓に居合わせた六人の素描から始まり、それぞれの人物が少しずつ影を帯びていく。直木三十五の訳で、1930年刊の平凡社『世界探偵小説全集』第九巻「ブラウン奇譚」に収められた。

あらすじ

大西洋を渡る客船で、考古学者スメール教授はブラウン神父に打ち明ける。かつてクレタ島の地下道で、裏に魚の印のある金の十字架を見つけたとき、闇の中から姿を見せない男が話しかけ、十字架を手放さなければ殺すと告げた。以来、脅迫が続いている。最近サセックスのダルハムの教会の下の墓所で、ミイラにされた僧の遺骸とともに同じ型の十字架が見つかったという。教授と神父が村を訪れると、船で同席した婦人旅行家ダイアナ夫人、気取り屋のターラント、記者スミス、髭の外国人講師もなぜか集まっていた。考古学者でもある老牧師ウォルターが一行を迎え、十字架に触れる者には呪いがかかるという中世の伝説を語る。地下の礼拝堂で教授が遺骸の胸の十字架に指を触れたとたん、支え棒が外れて石棺の蓋が落ち、教授は頭を打って倒れる。命は取り留めたが、その後、牧師の衣服が海辺の岩の上で見つかり、牧師は身投げしたと思われた。ブラウン神父は、呪いの伝説が中世の実情に合わない作り話だと見抜く。真相はこうだった。教授を狙う男は先回りして墓所で本物のウォルター牧師を殺し、その死体を古い法衣に包んで「ミイラ」として石棺に納め、ロザリオの紐を支え棒に巻きつけて十字架に触れると蓋が落ちる罠を仕掛けた。そして牧師になりすまして一行を迎え、作り話の伝説を語ったのである。犯人は姿を消し、その正体はついに知れない。回復した教授は、自分を迫害した男の姿に、迫害された初期のキリスト教徒を重ねて語る。

登場人物

冒頭部(原文より)

 六人の人間が小さい卓子を囲んで座っていた。彼等は少しも釣合いがとれずちょうど同じ、小さい無人島に離れ離れに破船したかのように見えた。とにかく海は彼等をとりかこんでいた。なぜならある意味において彼等の島はラピュタのような大きいそして飜る他の島にとりかこまれていたから。なぜならその小さい卓子は大西洋の無限な空虚を走ってる、巨船モラヴィアの食堂に散らばってる多くの小さい卓子の一つであった。その小さい仲間は皆アメリカから英国への旅行者に他ならなかった。彼等の二人はとにかく名士と呼ばれるかもしれない、が他の人々は名の知れないものであった。そして一二の点において信頼し難くさえあった。

「金の十字架の呪い」チェスタトン(青空文庫)

末尾部(原文より)

「そうじゃ」師父ブラウンが言った、「しかし戦争が起りましたじゃ、魚は再び地下におしこめられるかもしれん、だがもう一度この明るい太陽の光りのもとに出て来るじゃろう。セント・アントニーが諧謔的に注意したように、ノアの大洪水に生き残るのははただ魚だけじゃ」

「金の十字架の呪い」チェスタトン(青空文庫)

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