暗号舞踏人の謎(コナン・ドイル)のあらすじ・登場人物
踊る人形が告げる殺意
- ミステリ
- 翻訳
- 文字数
- 26,167字
- 読了目安
- 約52分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
今日では「踊る人形」の題で知られるシャーロック・ホームズものの一篇(1903年)を、三上於菟吉が訳したもの。壁や窓枠に描かれた、踊る小さな人形の落書きが暗号であることを見抜き、英語で最も多く使われる文字から順に当てはめてゆくホームズの解読は、暗号ものの古典として名高い。ポーの「黄金虫」とならんで頻度分析を広く知らしめた作品で、平凡社「世界探偵小説全集」の一冊として昭和初期に訳された。
あらすじ
化学実験にふけっていたホームズが、だしぬけにワトスンの投資の件を言い当てる場面から話は始まる。そこへノーフォークの地主ヒルトン・キューピット氏が訪ねてくる。アメリカ生まれの妻エルシーは、結婚のとき「過去については何も訊かないでほしい」と頼み、夫もそれを受け入れた。ところが近ごろ、アメリカからの手紙を読んだ妻が怯えはじめ、屋敷の窓枠や日時計に、踊る小さな人形のような落書きが現れるようになったという。ホームズは紙片に写し取られたその図形を持ち帰り、英語でもっとも多く使われる文字から順に当てはめる方法で解読にかかる。やがて意味が通じはじめた文面は、妻に向けた脅しへと変わってゆく。急を知って現場へ急ぐが、着いたときにはすでにキューピット氏は射殺され、妻も瀕死の重傷を負っていた。警察は無理心中と見るが、ホームズは弾丸の数と窓の状況から第三者の存在を割り出す。そして解読した暗号を逆に使い、踊る人形の手紙で犯人アベ・スラネーを屋敷へおびき寄せるのだった。
登場人物
- シャーロック・ホームズ 踊る人形の暗号を頻度分析で解読する
- ワトスン 語り手
- ヒルトン・キューピット ノーフォークの地主。妻の怯えを相談に来る
- エルシー その妻。アメリカでの過去を明かさない
- アベ・スラネー シカゴから追ってきた男。暗号の書き手
冒頭部(原文より)
ホームズは全く黙りこんだまま、その脊の高い痩せた身体を猫脊にして、何時間も化学実験室に向っていた。そこからは頻りに、いやな悪臭がただよって来る、――彼の頭は胸に深くちぢこめられて、その恰好は、鈍い灰色の羽毛の、黒い鳥冠の奇妙な鳥のようにも見えた。 「そこで、ワトソン君、――」 彼は突然に口を開いた。 「君は南アフリカのある投資事業に、投資することは、思い止まってしまったのだね」 私はサッと驚かされてしまった。私は彼の不思議な直覚力と云ったようなものには、毎度のことでよく慣れていたが、しかしこの私の胸中の、秘中の秘事にずばりっと図星を指されたのには、全くあきれ返ってしまった。 「一たい君は、どうしてその事を知っていたのだね?」 私は訊き返した。
「暗号舞踏人の謎」コナン・ドイル(青空文庫)
末尾部(原文より)
三時四十分の汽車があるが、我々はベーカー街に行って、夕食でも食べるとしようか、――」 簡単に結末だけを。 この亜米利加人のアベー・スラネーは、ノーアウィッチの冬期巡回裁判で、死刑を宣告されたのであったが、しかしヒルトン・キューピット氏が、最初に発射したと云うことが明瞭になったので情状酌量して、死刑を改めて懲役刑とされた。 それからヒルトン・キューピット夫人については、その後負傷はすっかり癒り、寡婦として一貫し、その生涯を救貧事業と、亡夫の遺産管理に専念していると云うことをきいただけである。
「暗号舞踏人の謎」コナン・ドイル(青空文庫)
原文を読む
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