盗まれた手紙(ポー)のあらすじ・登場人物
見つからない手紙を追う
- ミステリ
- 翻訳
- 文字数
- 20,711字
- 読了目安
- 約41分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
「モルグ街の殺人事件」「マリー・ロジェエの謎」に続く、ポーの名探偵オーギュスト・デュパンもの三部作の最後の一篇(1844年)。佐々木直次郎の訳。警視総監が屋敷じゅうを調べても見つからなかった手紙について、デュパンに相談する。相手の考え方に自分の推理を合わせるという発想を軸に、警察の捜査と探偵の視点の違いを描く作品で、精神分析や哲学の議論にも取り上げられてきた。
あらすじ
パリの秋の晩、デュパンと「私」が煙草をくゆらせていると、旧知の警視総監G——氏が訪ねてくる。王室のさる高貴な婦人から、D——大臣が一通の手紙を盗み取ったという。手紙の内容が公になれば婦人の立場は危うい。大臣が政治的な力としてそれを手元に置いているのは確実で、警察は留守をねらって大臣の屋敷を隅々まで捜索した。家具の脚に針を刺し、椅子の詰め物を調べ、床板を剥がし、庭の敷石まで顕微鏡で改めたが、手紙は出てこない。総監の話を聞いたデュパンは「もう一度よく捜してみたまえ」とだけ言って帰す。一か月後、ふたたび現れた総監に、デュパンは小切手と引き換えに手紙を渡してみせた。彼の説明はこうである。警察は詩人であり数学者でもある大臣の知恵を、自分たちの尺度でしか測っていない。大臣は隠そうとして隠したのではなく、誰の目にもさらされる場所に、表書きを裏返し、くしゃくしゃにして名刺差しへ無造作に差しておいたのだ。デュパンは緑の眼鏡をかけて訪問し、通りの騒ぎに乗じてそれをすり替えた。残してきた白紙には、旧怨をほのめかす一句が書きつけてあった。
登場人物
- オーギュスト・デュパン パリに住む推理の達人
- 私 デュパンと部屋を共にする語り手
- G—— パリの警視総監。屋敷を隅々まで捜索したが手紙を見つけられない
- D——大臣 高貴な婦人から手紙を盗み取り、政治的な力として握る
冒頭部(原文より)
パリで、一八――年の秋のある風の吹きすさぶ晩、暗くなって間もなく、私は友人C・オーギュスト・デュパンと一緒に、郭外サン・ジェルマンのデュノー街三十三番地四階にある彼の小さな裏向きの図書室、つまり書斎で、黙想と海泡石のパイプとの二重の快楽にふけっていた。少なくとも一時間というものは、我々は深い沈黙をつづけていた。そして誰かがひょっと見たら、二人とも、部屋じゅうに濛々と立ちこめた煙草のけむりがくるくると渦巻くのに、すっかり心を奪われているように見えたかもしれない。しかし、私自身は、その晩の早いころ我々の話題になっていたある題目のことを、心のなかで考えていたのだった。というのは、あのモルグ街の事件と、マリー・ロジェエ殺しの怪事件のことなのである。
「盗まれた手紙」ポー(青空文庫)
末尾部(原文より)
それに対して僕はごく機嫌よく、この怨みは忘れないぞと言ってやった。だから、彼も自分に一杯食わせた人間が誰だか知りたく思うに決っているだろうから、手がかりを与えないのはかわいそうだと僕は考えたんだ。彼は僕の筆蹟をよく知っている。で、僕はただ白紙の真ん中にこう書いておいたよ、―― ‘―― Un dessein si funeste, S'il n'est digne d'Atre, est digne de Thyeste.’ 「――かかる痛ましき企みは、よしアトレにふさわしからずとも、ティエストにこそふさわしけれ(19)」 とね。これはクレビヨン(20)の『アトレ』のなかにある文句なんだ」
「盗まれた手紙」ポー(青空文庫)
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。
同じ作家の作品
近い作品
- グロリア・スコット号 1930年(昭和5年)2月
- サレーダイン公爵の罪業 1930年(昭和5年)
- 作男・ゴーの名誉 1930年(昭和5年)
- 入院患者 1930年(昭和5年)2月
- 株式仲買店々員 1930年(昭和5年)2月
- 白銀の失踪 1930年(昭和5年)2月