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脳の中の麗人(海野十三)のあらすじ・登場人物

他人の恋を宿す脳

  • SF
  • 怪奇

海野十三 1939年(昭和14年)8月 「日の出」

文字数
13,774字
読了目安
約28分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

1939年(昭和14年)8月号の「日の出」に発表された、海野十三の怪奇SF短編。脳外科手術を受けて退院した男が、身に覚えのない手帖の記述と、他人の脳の一部を移植された事実に翻弄される。記憶と恋慕が脳の一部に宿るという奇想を描く。

あらすじ

黒木博士の大脳移植手術を受けて、一年近い入院ののち退院した宮川宇多郎は、新居の机の引き出しで、自分の筆跡なのに見覚えのない手帖を見つける。そこには、Yという女との恋が記されていた。やがて彼の前に、頭に繃帯を巻いた青年・矢部が現れ、自分の脳の一部を売って宮川に移植されたこと、美枝子という女を愛していることを告げる。宮川は矢部の恋人・美枝子に引きつけられ、二人の男と一人の女、そして博士を巻き込んだ奇怪な関係が始まる。

登場人物

冒頭部(原文より)

   奇異の患者 「ねえ、博士。宮川さんは、いよいよ明日、退院させるのでございますか」 「そうだ、明日退院だ。それがどうかしたというのかね、婦長」 「あんな状態で、退院させてもいいものでございましょうかしら」 「どうも仕方がないさ。いつまで病院にいても、おなじことだよ。とにかく傷も癒ったし、元気もついたし、それにあのとおり退院したがって暴れたりするくらいだから、退院させてやった方がいいと思う」 「そうでしょうか。わたくしは気がかりでなりませんのよ」

「脳の中の麗人」海野十三(青空文庫)

末尾部(原文より)

「いや、この傷では宮川氏はもう二度と生きかえらないでしょう」  宮川は、彼が捨てた八形八重のため、二度も兇刃をうけたのだった。博士は宮川のためにそれをいわなかったが、あの青い手帖に書かれてあったYという女はこの八重にちがいなく、もちろんあの手帖は宮川のものにちがいなかった。ただ手帖を記憶していた脳の部分が欠損したので、その記憶を失っただけのことだ。  この事件以来、博士は脳の移植手術をやることを好まなくなった。

「脳の中の麗人」海野十三(青空文庫)

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