悪魔の紋章(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
二大名探偵 対 復讐の連続殺人
- ミステリ
- 怪奇
- 文字数
- 151,315字
- 読了目安
- 約5時間3分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1937年(昭和12年)から翌年にかけて「日の出」に連載した長編探偵小説。法医学の権威にして名探偵の宗像隆一郎博士と、天才・明智小五郎という二人の探偵を配し、渦巻き形の指紋を「紋章」のように残す、執念深い連続殺人鬼に挑ませる。幼時の惨劇に端を発する常軌を逸した復讐——その底知れぬ悪意の正体が、二人の名探偵の推理によって暴かれていく。おどろおどろしい怪奇趣味と本格推理が渾然と溶け合った、乱歩長編の一つである。
あらすじ
丸の内に研究室を構える法医学の権威・宗像隆一郎博士は、警視庁もさじを投げる難事件ばかりを手がける名探偵として、天才・明智小五郎と並び称される存在だった。その宗像研究室のもとへ、渦巻き形の奇怪な指紋——まるで悪魔の「紋章」のような徴——を現場に残す、連続殺人事件が持ち込まれる。次々と犠牲者が生まれ、事件の背後には、常識では測りがたい執念深い悪意がひそんでいた。宗像博士と明智小五郎、二人の名探偵が推理を尽くしてたどりついた真相は、幼い日に両親を惨殺され、その血の海を這いまわった記憶に取り憑かれた、一組の兄妹による復讐だった。仇敵の子孫を根絶やしにするために生涯を捧げるという、精神病理の領分に属するその執念——「この二人は気違いでした。しかし、復讐という固着観念の遂行の為には、天才のように聡明な気違いでした」。真相を語り終えた名探偵の顔からは微笑が消え、その額には、これまで誰も見たことのない悲痛な皺が刻まれていた。怪奇と本格推理が交錯する、乱歩の長編である。
登場人物
- 宗像隆一郎 法医学の権威にして名探偵
- 明智小五郎 天才探偵
冒頭部(原文より)
法医学界の一権威宗像隆一郎博士が、丸の内のビルディングに宗像研究室を設け、犯罪事件の研究と探偵の事業を始めてからもう数年になる。 同研究室は、普通の民間探偵とは違い、其筋でも手古摺るほどの難事件でなければ、決して手を染めようとはしなかった。所謂「迷宮入り」の事件こそ、同研究室の最も歓迎する研究題目であった。宗像博士は、研究室開設第一年にして、すでに二つの難事件を見事に解決し、一躍その名声を高め、爾来年毎に著名の難事件を処理して、現在では、名探偵と云えば、明智小五郎か宗像隆一郎かというほどに、世に知られていた。
「悪魔の紋章」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
仇敵の子孫を根絶やしにする為に、生涯を捧げるなどという心理は、寧ろ精神病理学の領分に属するもので、我々には全く理解し難い所です。 この二人は気違いでした。しかし、復讐という固着観念の遂行の為には、天才のように聡明な気違いでした」 いつもにこやかな名探偵の顔から、微笑の影が全く消え失せていた。そして、その青白い額に、これまで誰も見たことのないような、悲痛な皺が刻まれていたのである。
「悪魔の紋章」江戸川乱歩(青空文庫)
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