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赤外線男(海野十三)のあらすじ・登場人物

光線が暴く奇怪な事件

  • SF
  • ミステリ

海野十三 1933年(昭和8年)5月 「新青年」

文字数
38,889字
読了目安
約1時間18分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

1933年(昭和8年)に「新青年」に発表された、海野十三の探偵小説。新宿駅のホームで起きた女性の轢死事件に始まり、「見えない光」赤外線をめぐる研究所で、姿の見えない怪人「赤外線男」が跳梁する。名探偵・帆村荘六が挑む不可解な連続事件を、当時最先端のテレビジョンと光線の科学を織り込んで描く、日本SFミステリの先駆的な一編。

あらすじ

新宿駅のホームで女性が電車に飛び込み、顔の潰れた遺体は兄を名乗る男に引き取られる。ところが翌晩、その男が現れ、死んだはずの妹が帰ってきたと告げ、掘り返した棺には別人の遺体が入っていたことが判明する。一方、Z大学の研究所では、深山理学士が人間の目に見えない赤外線を見る装置を研究中だった。そこへ実習生として女学生・白丘ダリアが現れ、二人は研究に没頭するが、やがて研究室が荒らされ、「赤外線男」の噂が広がる。警視庁での実験公開の席で捜査課長が殺され、続いて理学士らも殺害される。名探偵・帆村荘六は、視覚をめぐる意外な手がかりから、事件の裏に潜む真相に迫っていく。

登場人物

冒頭部(原文より)

1  この奇怪極まる探偵事件に、主人公を勤める「赤外線男」なるものは、一体全体何者であるか? それはまたどうした風変りの人間なのであるか? 恐らくこの世に於て、いまだ曾て認識されたことのなかった「赤外線男」という不思議な存在――それを説明する前に筆者は是非とも、ついこのあいだ東都に起って、もう既に市民の記憶から消えようとしている一迷宮事件について述べなければならない。  これは事件というには、実にあまりに単純すぎるために、もう忘れてしまった人が多いようであるが、しかし知る人ぞ知るで、識っている人にとっては、これ又奇怪な事件であることに、この迷宮事件が後になって、例の摩訶不思議な「赤外線男」事件を解く一つの重大なる鍵の役目を演じたことを思えば、尚更逸することのできない話である。

「赤外線男」海野十三(青空文庫)

末尾部(原文より)

 それは、この『便所』と書いた赤い灯は、普通の視力をもった人間には、到底発見することの出来ない光だったのだ。つまり赤外線灯で『便所』という文字を照していたのだ。吾々のようなものならば、その前を無造作に通りすぎてしまう筈だった。赤外線の見える女の悲しさに、ダリア嬢はついそのような灯の下をくぐってしまったのだ。その場の光景は予て張番をさせて置いた監視員によって、すっかり見とどけられてしまった。とうとう異常な視力の持ち主は化の皮を剥がれてしまったのだ。流石のダリア嬢もこうなっては策の施しようもなく、とうとう一切を白状してしまった。『赤外線男』――いや『赤外線女』の事件は、ざっとこんな風だった」

「赤外線男」海野十三(青空文庫)

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