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聖アレキセイ寺院の惨劇(小栗虫太郎)のあらすじ・登場人物

払暁、聖堂の鐘が鳴る

  • ミステリ
  • 怪奇

小栗虫太郎 1933年(昭和8年)11月 「新青年」

文字数
32,449字
読了目安
約1時間5分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1933年(昭和8年)11月の『新青年』に発表された小栗虫太郎の探偵小説。法水麟太郎が登場する。舞台は東京西郊の丘に立つ聖アレキセイ寺院。かつて白系ロシア人の将軍が建立した聖堂も、今では荒れ、堂守の親娘が暮らすばかりになっている。一月の払暁、決まった時刻には鳴らないはずの鐘が響き、近くに住む支倉検事が異変を感じる。呼び出された法水が寺院へ向かうところから、捜査が始まる。序では、ロシア革命後の亡命者の栄枯と聖堂の来歴を語り、その歴史を雪と霙に閉ざされた建物の姿に重ねる。鐘楼、階段、各部屋の配置といった空間の説明も細かく、人物の移動や音が重要な観察の対象となる。法水と検事の対話に、寺院に出入りする人々の証言が加わり、荒廃した礼拝の場が捜査の現場として描き直されていく。異国の政治と身近な東京の地理とが接する探偵譚である。

あらすじ

東京西郊の丘に、ニコライ堂を思わせる壮大な天主教の大伽藍・聖アレキセイ寺院がそびえている。ロシア革命に敗れて亡命した白系ロシア人たちが、この寺院を拠り所に異郷の日々を送っていた。その閉ざされた聖域で、亡命将軍やゆかりの人々をめぐる惨劇が次々と起こる。名探偵・法水麟太郎は、寺院の縁起、ギリシャ正教の典礼、亡命者たちが背負う祖国の歴史といった膨大な知識を手繰りながら、教会という密室の底に沈む秘密へと分け入っていく。錯綜した人間関係と巧緻な犯罪の構図を解き明かした法水は、事件の真相をあえて公にせず、犯人にみずからの流儀で裁きを下す。異国情緒とゴシックの気韻に満ちた、法水麟太郎シリーズ初期の逸品である。

登場人物

冒頭部(原文より)

聖アレキセイ寺院――。世俗に聖堂と呼ばれている、このニコライ堂そっくりな天主教の大伽藍が、雑木林に囲まれた東京の西郊Iの丘地に、R大学の時計塔と高さを競って聳り立っているのを……。そして、暁の七時と夕の四時に嚠喨と響き渡る、あの音楽的な鐘声も、たぶん読者諸君は聴かれたことに思う。

「聖アレキセイ寺院の惨劇」小栗虫太郎(青空文庫)

末尾部(原文より)

つまり、この事件の成因に僕独自の解釈を施した結論でして、犯人に対する刑の執行が、刑務所より精神病院の方がふさわしいと考えたからです。真相が僕一人だけの秘密だとすれば、当然僕に裁く権利があるはずですからね。」 その数時間後、二人の同乗した寝台車が、折から茜色の雪解跡をついてB癲狂院の門を潜った。

「聖アレキセイ寺院の惨劇」小栗虫太郎(青空文庫)

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