後光殺人事件(小栗虫太郎)のあらすじ・登場人物
法水麟太郎、寺の変死を追う
- ミステリ
- 文字数
- 23,948字
- 読了目安
- 約48分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1933年(昭和8年)10月の『新青年』に発表された小栗虫太郎の探偵小説。後に『黒死館殺人事件』でも活躍する法水麟太郎の初登場作である。七月十六日の朝、小石川の劫楽寺で住職の鴻巣胎龍が変死したと、支倉検事から法水へ電話が入る。被害者は画家としても知られた人物で、寺の荒れた堂に合掌した姿で座っていた。前捜査局長で刑事弁護士の法水は、支倉検事、捜査局長の熊城卓吉とともに現場を調べる。池や敷石、堂内の像、遺体の姿勢などを細かく記し、目の前の配置を思い描かせながら推理を進める形式だ。三人が観察に言葉を差し挟むやり取りには、互いの考えを試すような調子がある。苔や湿気に包まれた境内の描写に、美術品や人体についての説明が重なり、寺の静けさと捜査の緊張とを同じ場面に作り出している。
あらすじ
普賢山劫楽寺の住職で、絵筆を捨てた画伯としても知られる鴻巣胎龍が、奇怪な変死を遂げた。仏前で合掌したままの姿で発見された屍体には外傷もなく、毒物の形跡も判然としない。前捜査局長にして一流の刑事弁護士、名探偵・法水麟太郎は、支倉検事に請われて現場に赴き、寺に伝わる仏像と、堂内に射し込む光線の秘密に着目する。信仰と美術をめぐる関係者たちの確執を解きほぐしながら、法水は「後光」という現象に隠された恐るべき殺人の仕掛けを暴いていく。光学と仏教美術の該博な知識を駆使した推理の果てに事件の真相が明かされ、追いつめられた犯人は法水の眼前で壮絶な最期を遂げる。名探偵・法水麟太郎の記念すべき初登場作である。
登場人物
- 法水麟太郎 前捜査局長で刑事弁護士の名探偵。博覧強記の知識で難事件に挑む。本作が初登場
- 支倉検事 法水に捜査への助力を求める検事。以後もたびたび法水と行動を共にする
- 鴻巣胎龍 普賢山劫楽寺の住職。堅山画伯としても知られ、密室で合掌したまま変死する
- 雫石喬村 胎龍と並び称された画家で法水の友人。劫楽寺の隣に住む
冒頭部(原文より)
前捜査局長で目下一流の刑事弁護士である法水麟太郎は、招かれた精霊の去る日に、新しい精霊が何故去ったか――を突き究めねばならなかった。と云うのは、七月十六日の朝、普賢山劫楽寺の住職――と云うよりも、絵筆を捨てた堅山画伯と呼ぶ方が著名であろうが――その鴻巣胎龍氏が奇怪な変死を遂げたと云う旨を、支倉検事が電話で伝えたからである。
「後光殺人事件」小栗虫太郎(青空文庫)
末尾部(原文より)
と云い終るが早いか、朔郎は突然身を飜えして、背後にある配電函の側に駈け寄った。硝子がパンと砕けると同時に法水は思わず眼を瞑った。閃光が瞼を貫いて、裂く様な叫声を聴いたが、一瞬後の室内は、焦げた毛の臭が漂うのみで、さながら水底の様な静寂だった。顳に高圧電流をうけて、此の若い復讐者は再び蘇生する事がなかったのである。
「後光殺人事件」小栗虫太郎(青空文庫)
原文を読む
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