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縊死体(夢野久作)のあらすじ・登場人物

新聞記事を待つ男

  • ミステリ
  • 怪奇

夢野久作 1933年(昭和8年)1月 「探偵クラブ」

文字数
1,464字
読了目安
約3分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

恋人を絞め殺して空家に吊るした男が、毎日新聞に事件記事が載るのを待ちつづける——夢野久作の掌編ミステリ。原稿用紙わずか数枚に、夢野らしい奇想と後味の悪さが凝縮された一編。

あらすじ

どこかの公園のベンチ。噴水の音を聞きながら、「私」は二、三枚の夕刊を広げている。探しているのは、一か月ほど前に郊外の空家で自分が絞め殺した下町娘の死体に関する報道である。深い恋仲だったその娘が、ある夕方、あまりに美しい桃割れと振袖姿で会いに来たので、私は息苦しさに耐えられなくなり、離れ家へ連れこんで一思いに絞め殺した。そして扱帯を解いて鴨居に引っかけ、縊死に見せかけて何食わぬ顔で下宿に帰ったのだった。以来、朝と晩の二度、この公園で新聞に目を通すのが習慣になっている。「振袖娘の縊死」という見出しを予期しながら——だがそんな記事はどこにも出ない。ひと月たっても死体が発見されないことに、私はしだいに落ち着かなくなり、ついに確かめに行く決心をする。空家の前に立ち、誰も通らないのを見澄まして扉を開け、真っ暗な中を探りながら奥の八畳へ。マッチを擦って目にしたものは——紛う方ない私自身の死体であった。バンドを梁に引っかけ、バットを啣え、右手にマッチを、左手に新聞紙を掴んで。驚きのあまり気が遠くなり、これは警察のトリックではないかという疑いが頭をよぎった瞬間、背後の暗闇から若い女の笑い声が聞こえてくる。それは、私が絞め殺した彼女の声に相違なかった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 どこかの公園のベンチである。  眼の前には一条の噴水が、夕暮の青空高く高くあがっては落ち、あがっては落ちしている。  その噴水の音を聞きながら、私は二三枚の夕刊を拡げ散らしている。そうして、どの新聞を見ても、私が探している記事が見当らないことがわかると、私はニッタリと冷笑しながら、ゴシャゴシャに重ねて押し丸めた。

「縊死体」夢野久作(青空文庫)

末尾部(原文より)

「……………」  ……それは紛う方ない私の死体であった。  私は驚きの余り気が遠くなって来た。……その瞬間に、思いもかけない私の背後のクラ暗の中から、若い女の笑い声が聞えて来た。  それは私が絞め殺した彼女の声に相違なかった。 「オホホホホホホ……あたしの思いが、おわかりになって……」

「縊死体」夢野久作(青空文庫)

原文を読む

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