金銀の衣裳(夢野久作)のあらすじ・登場人物
金銀の繭を織る玉のごとき娘
- 幻想
- 文字数
- 2,246字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
夢野久作の童話。貧しい母娘のもとに、玉のように美しい娘・お玉がいた。ある日飛び込んできた蚕が、金と銀に輝く繭で美しい衣裳を織りなす——貧しくとも心美しい母娘に訪れる、幸福の物語である。
あらすじ
昔、ある処に貧しい母娘があった。父を早くに亡くし、母は洗濯や針仕事の賃金でやっと暮らしを立てていた。娘のお玉は、玉のように美しく月のように清らかで、近所の人々は「砂利の中に玉が湧いた」と言い囃した。母は、こんなに美しい娘に汚い襤褸しか着せられないことを嘆いていた。ところがお玉が七つになった春、一匹の蛾が飛び込んで卵を産みつけた。母はこれを神の恵みと思い、隣家から桑の葉を盗んでは蚕を育てる。やがて蚕は繭をかけ——その繭は、なんと金と銀に輝いていた。金銀の繭から織り上げた美しい衣裳をまとったお玉は、その美しさで皇太子の目にとまり、やがてこの国の后の位に就く。母娘の再会の喜び、娘の出世を喜ぶ母、美しい后を得た皇太子——世界は喜びと驚きに満ちた。貧しくとも心美しい母娘に訪れる幸福を描いた、夢野久作の童話である。
冒頭部(原文より)
昔或る処に貧乏な母娘がありました、お父様は早くになくなつて今はお母様と娘のお玉と二人切でしたが何しろ貧乏なので其日其日の喰べるものもありません、只お母様が毎日毎日他所へ行つて着物の洗ぎ洗濯や針仕事をしていくらかの賃金を貰つて来てやつと細い煙を立てゝ居りました。
「金銀の衣裳」夢野久作(青空文庫)
末尾部(原文より)
年月は矢の様に経つてお玉が十七の時に始めて此国のお后の位に備はりました。国々から集まつた大名や殿様は皆其の儀式の華やかなのに驚いて只もう感心してしまひましたが其中でも金銀の衣裳を着たお玉の美くしさは唯一人として頭を上げて真面に見る事が出来た者はありませんでした。
「金銀の衣裳」夢野久作(青空文庫)
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