懐中時計(夢野久作)のあらすじ・登場人物
誰も見ていなくても、動いている
- 幻想
- 文字数
- 185字
- 読了目安
- 約1分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
箪笥の裏に落ちた懐中時計と、それを笑った鼠との、十行足らずのやりとり。夢野久作が新聞に書いた童話で、「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」という一言が、大人の胸にも突き刺さる。
あらすじ
懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて、一人でチクタクと動いていた。それを見つけた鼠が笑って言う。「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」。すると懐中時計はこう答えた。「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」。さらに続けて、「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」。鼠は恥かしくなって、コソコソと逃げて行きました——それだけの、十行足らずの掌話である。しかしその短さゆえに、懐中時計の言葉はまっすぐに読者へ届く。人が見ていようといまいと同じように動きつづけるからこそ、いざというときに用をなす。見られている時だけ働くのも、見られていない時だけこそこそ働くのも、どちらも同じく「泥棒」なのだ、と。子ども向けの新聞欄に書かれた一編だが、その戒めは大人にこそ効く。
登場人物
- 懐中時計 箪笥の裏で動きつづける
- 鼠 それを笑う
冒頭部(原文より)
懐中時計が箪笥の向う側へ落ちて一人でチクタクと動いておりました。 鼠が見つけて笑いました。 「馬鹿だなあ。誰も見る者はないのに、何だって動いているんだえ」
「懐中時計」夢野久作(青空文庫)
末尾部(原文より)
「人の見ない時でも動いているから、いつ見られても役に立つのさ」 と懐中時計は答えました。 「人の見ない時だけか、又は人が見ている時だけに働いているものはどちらも泥棒だよ」 鼠は恥かしくなってコソコソと逃げて行きました。
「懐中時計」夢野久作(青空文庫)
原文を読む
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