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シグナルとシグナレス(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

本線と軽便鉄道、二本の信号機の恋

  • 恋愛
  • 幻想

宮沢賢治 1923年(大正12年)5月 「岩手毎日新聞」

文字数
11,301字
読了目安
約23分
表記
新字新仮名
舞台
  • 岩手県

この作品について

本線の立派なシグナル柱と、軽便鉄道のつつましいシグナレス——身分違いの二本の信号機の恋を描いた、宮沢賢治の異色作。電信柱たちの噂、倉庫の屋根の仲人、そして星空の下で交わされる約束。無機物を主人公にしながら、これほど初々しい恋愛物語もめずらしい。

あらすじ

「ガタンコガタンコ、シュウフッフッ」——軽便鉄道の一番列車が歌いながらやって来てとまると、軽便鉄道づきのシグナル柱、シグナレスが白い腕木を上げた。すぐそばには本線の立派なシグナル柱が立っている。ある朝、シグナルはシグナレスに声をかけ、二人はぽつりぽつりと言葉を交わすようになった。しかし本線のシグナルと軽便鉄道のシグナレスでは身分がちがう。軽便鉄道づきの電信柱たちはこの仲を面白く思わず、しきりに悪口を言い、シグナル附きの電信柱長も「あんな軽便風情と」と苦い顔をする。それでも二人の心は通いあい、ついにシグナルは「僕たち、約束しよう」と申し出た。仲人を引き受けたのは、そばの倉庫の黒い屋根である。屋根はふたりの誓いを見届けて、「僕が証人だ」と請け合った。その夜、二人は雪の中で同じ夢を見る。地面も海も見えない、星々のあいだの霧の火が燃える空——「僕たちのねがいがかなったんです」「地球は遠いですね」。二人きりの世界で言葉を交わしていると、いきなり太い声がした。「それは親切とも」。気がつけば、いつのまにか霧は晴れ、空一面の星が青や橙にせわしくまたたき、向こうには真っ黒な倉庫の屋根が笑いながら立っていた。二人はまたほっと小さな息をしたのだった。

登場人物

冒頭部(原文より)

「ガタンコガタンコ、シュウフッフッ、   さそりの赤眼が 見えたころ、   四時から今朝も やって来た。   遠野の盆地は まっくらで、   つめたい水の 声ばかり。  軽便鉄道の東からの一番列車が少しあわてたように、こう歌いながらやって来てとまりました。

「シグナルとシグナレス」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

「それは親切とも」いきなり太い声がしました。気がついてみると、ああ、二人ともいっしょに夢を見ていたのでした。いつか霧がはれてそら一めんの星が、青や橙やせわしくせわしくまたたき、向こうにはまっ黒な倉庫の屋根が笑いながら立っておりました。  二人はまたほっと小さな息をしました。

「シグナルとシグナレス」宮沢賢治(青空文庫)

原文を読む

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