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河伯令嬢(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

瓜に宿る川の女神の縁起

  • 幻想
  • 恋愛

泉鏡花 1927年(昭和2年)

文字数
33,751字
読了目安
約1時間8分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 石川県

この作品について

末尾に昭和2年(1927年)5月と記された幻想小説。語り手が、彫金師の小山夏吉から旅の打ち明け話を聞くという形で進む。夏吉は能登・大笹の鉱泉宿で、金沢の俳人可心の紀行文と、土地に祭られる川裳明神の縁起を読んだという。芭蕉の門流と能登の地誌、義経伝説、貧しい少年期の悲しい記憶が、炬燵を囲んだ長い語りのなかで一つにつながっていく。河の女神への信仰がどう生まれたかを、哀しい恋の記憶と重ねて描く。

あらすじ

語り手は炬燵で、彫金の名人小山夏吉の能登の旅の話を聞く。夏吉は大笹の鉱泉宿の枕元で、金沢の俳人可心の紀行文『能登路の記』と、その終わりに添えられた川裳明神の縁起を読んだ。耳の遠い可心は旅の途中、杜若の咲く家の洗濯女に茶を断られて恨んだが、翌朝、その女が荷かつぎとして現れる。川口の砂堤を意地を張って渡りかけた可心を、女は身を挺して助け、自分は荒浪にさらわれて命を落とした。可心はその姿を刻ませて女神像とし、生涯の堂守となった。夏吉自身も十七の夏、金石街道の人待石で、人買いに連れられた娘お優と出会い、心中を企てたが、瓜畑で村の若者に襲われ、娘は連れ去られたままだった。縁起を読んだ翌日、夏吉は可心寺の廚子で瓜の中の鈴の音を聞き、割れた瓜から魚が池へ落ちる幻のなかでお優に抱かれる。『お優さんは、この炬燵のここに居ます』と夏吉は言う。附記では、夏吉はそのまま能登から戻らなかったと記される。

登場人物

冒頭部(原文より)

 北国金沢は、元禄に北枝、牧童などがあって、俳諧に縁が浅くない。――つい近頃覧たのが、文政三年の春。……春とは云っても、あのあたりは冬籠の雪の中で、可心――という俳人が手づくろいに古屏風の張替をしようとして――(北枝編――卯辰集)――が、屏風の下張りに残っていたのを発見して、……およそ百歳の古をなつかしむままに、と序して、丁寧に書きとった写本がある。

「河伯令嬢」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 あとでも、時々、瓜は市場に出た。が、今は他のものを装る器具でない。瓜はそのまま天来の瓜である。従って名実ともに鏨は冴えた、とその道のものは云った。が惜しいかな――去年の冬、厳寒に身を疼んで、血を咯いて、雪に紅の瓜を刻んだ。

「河伯令嬢」泉鏡花(青空文庫)

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