アプリで読む

無料・登録不要

小春の狐(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

小春日和の茸狩りと狐の噂

  • 幻想
  • 恋愛

泉鏡花 1924年(大正13年)1月

文字数
13,102字
読了目安
約26分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 石川県

この作品について

地震のあとの東京から北国の温泉町へ来た「私」が、湖畔の村で茸を売る若い女・浪路と出会い、松山へ茸狩りに出かける物語。末尾には1924年(大正13年)1月と記され、関東大震災の翌年の作として読める。実盛塚のある北国の初冬、まだ渋の抜けない柿、幼い日の茸狩りの思い出、湖畔の翁や魚売りの女たちとの掛け合いなど、旅先の風物が細かく書き込まれる。題の「狐」が誰を指すのかが、終盤で優しく反転する。

あらすじ

地震の都から北国の温泉町へ来た「私」は、初冬の朝、湖畔を散歩して雑貨店で草履を買い、村はずれで霜こしという黄色い茸を三銭に値切られている若い女に出会う。女は病む母の本復を願う稲荷の賽銭に充てるつもりだと言い、茸狩りの好きな「私」は、幼い日に年上の娘に手を引かれて山へ上った思い出に誘われ、案内を頼む。女は浪路と名乗る。道すがら黄色い帽子の翁に出会い、浪路は「山の稲荷か潟の竜神」だと怖れるが、松山では茸も松露もなかなか見つからない。それでも浪路は小さな紅茸に手を合わせ「小松山さん、山の神さん、どうぞ茸を頂戴な」と唱え、ようやく茸を見つける。ところが帰り道の橋で魚売りの女たちに笊の中身を「ばば蕈」「狐の睾丸」と笑われ、「女狐に魅まれた」と囃されてしまう。浪路は涙ながらに、頼まれた茸が見つからず、偽物と知りながら差し出したと打ち明ける。「私」は浪路の前髪に自然に挿さった松葉を簪に見立て、「だました私は狸だ」と言ってその手を取る。

登場人物

冒頭部(原文より)

 朝――この湖の名ぶつと聞く、蜆の汁で。……燗をさせるのも面倒だから、バスケットの中へ持参のウイスキイを一口。蜆汁にウイスキイでは、ちと取合せが妙だが、それも旅らしい。……  いい天気で、暖かかったけれども、北国の事だから、厚い外套にくるまって、そして温泉宿を出た。  戸外の広場の一廓、総湯の前には、火の見の階子が、高く初冬の空を抽いて、そこに、うら枯れつつも、大樹の柳の、しっとりと静に枝垂れたのは、「火事なんかありません。」と言いそうである。

「小春の狐」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

「ええ。旦那さんのお情は、翡翠です、白金です……でも、私はだんだんに、……あれ、口が裂けて。」 「ええ。」 「目が釣上って……」 「馬鹿な事を。――蕈で嘘を吐いたのが狐なら、松葉でだました私は狸だ。――狸だ。……」  と言って、真白な手を取った。  湖つづき蘆中の静な川を、ぬしのない小船が流れた。

「小春の狐」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品