やまなし(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
「クラムボンはわらったよ」
- 幻想
- 文字数
- 2,634字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
宮沢賢治が1923年(大正12年)、「岩手毎日新聞」に発表した短編童話。「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈」と題して、谷川の底に暮らす二匹の蟹の子供の目を通して、「五月」と「十二月」の二つの情景を描く。「クラムボンはわらったよ」の謎めいた一節や、突然の死の影と、静かな豊穣の喜びとが、みずみずしい色彩とオノマトペで結晶した、賢治童話のなかでもとりわけ愛され、教科書でも親しまれてきた名作である。
あらすじ
谷川の底の、二匹の蟹の子供らの物語を、賢治は「二枚の青い幻燈」として映し出す。――「五月」。青白い水の底で、二匹の蟹の子供が「クラムボンはわらったよ」「クラムボンは死んだよ」と、たわいのない言葉をかわしている。そこへ突然、鉄砲玉のように光るものが水中に飛び込み、魚の姿が見えなくなる。父蟹はそれが翡翠(かわせみ)だと教える。おだやかな水の世界に、不意に死の恐怖がよぎる。――「十二月」。蟹の子供らはもうだいぶ大きくなっている。月夜の水の底に、とぷんと音を立てて落ちてきたのは、熟した山なし(やまなし)の実だった。いいにおいのするその実は、しばらく流れていって、やがて木の枝にひっかかって止まる。二日ほど待てば実が沈み、やがておいしいお酒ができるだろう――父蟹はそう言って子らをなだめる。青じろい焔をゆらめかせる波の下で、蟹の親子は静かな豊かさに包まれる。「私の幻燈はこれでおしまいであります」。生と死、恐怖と恵みとが、みずみずしい色彩と音のなかに描き分けられた、賢治童話の代表作である。
登場人物
- 蟹の子供ら 谷川の底に暮らす二匹の兄弟蟹。「クラムボン」をめぐって語り合い、五月には翡翠の影に、十二月には山なしの実に出会う
- 父蟹 蟹の子供らの父。翡翠に怯える子らをなだめ、落ちてきた山なしの行方を教える
冒頭部(原文より)
小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。 一、五月 二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。 『クラムボンはわらったよ。』 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
「やまなし」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
波はいよいよ青じろい焔をゆらゆらとあげました、それは又金剛石の粉をはいているようでした。 * 私の幻燈はこれでおしまいであります。
「やまなし」宮沢賢治(青空文庫)
名文
二疋の蟹の子供らが青じろい水の底で話していました。 『クラムボンはわらったよ。』 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
谷川の底を「二枚の青い幻燈」として描く童話の一場面。正体の知れない「クラムボン」という語だけで、幼い蟹たちの世界が鮮やかに立ち上がる。
私の幻燈はこれでおしまいであります。
二枚の青い幻燈として語られた物語の結び。語り手が幕を引くことで、蟹の親子の世界がふっと遠のいていく。
原文を読む
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