白(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
黒くなった白い犬の物語
- 幻想
- 文字数
- 7,583字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
芥川が児童のために書いた童話。1923年(大正12)に発表された。犬殺しに襲われた仲間の黒犬を見捨てて逃げた白い犬「白」が、ふと気づくと、自分の毛並みが真っ黒に変わっている。臆病と自己嫌悪、良心の呵責を、動物を主人公にして描く。子どもにも大人にも読み継がれる、芥川童話の代表作の一つである。
あらすじ
飼い犬の白は、ある日の散歩の途中、仲間の黒犬が犬殺しに狙われているのを目にする。助けを呼ぼうとするが、自分にも罠の手が及ぶのを恐れ、黒犬を見捨てて一目散に逃げ出してしまう。ところが家に帰ってみると、真っ白だったはずの体が、いつのまにか墨のように真っ黒に変わっている。飼い主のお嬢さんや坊ちゃんにも自分の犬だと気づいてもらえず、追い払われた白は、臆病な自分への嫌悪に打ちのめされる。「黒く汚れた心が体に現れたのだ」と悟った白は、もう命など惜しくないと、火事の家から人を救い、暴れ馬から子どもをかばうなど、身を挺した善行を各地で重ねていく。新聞に載るほどの評判の犬となってもなお死ねなかった白は、疲れ果てて元の家へ戻り、月に一目だけ主人の顔を見て死のうと、犬小屋のそばで眠りにつく。翌朝目を覚ますと、その体は再びもとの純白に返っていた。喜びの声をあげる子どもたちに抱きしめられ、白は涙を流すのだった。
登場人物
- 白 仲間を見捨てた罰に体が黒く変わり、命がけの善行で自分を取り戻そうとする犬
- 黒 犬殺しに殺される、白の仲間の黒犬
- お嬢さん・坊ちゃん 白の飼い主の姉弟
冒頭部(原文より)
ある春の午過ぎです。白と云う犬は土を嗅ぎ嗅ぎ、静かな往来を歩いていました。狭い往来の両側にはずっと芽をふいた生垣が続き、そのまた生垣の間にはちらほら桜なども咲いています。白は生垣に沿いながら、ふとある横町へ曲りました。が、そちらへ曲ったと思うと、さもびっくりしたように、突然立ち止ってしまいました。
「白」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
「あら、白は泣いているわよ。」お嬢さんは白を抱きしめたまま、坊ちゃんの顔を見上げました。坊ちゃんは――御覧なさい、坊ちゃんの威張っているのを!「へっ、姉さんだって泣いている癖に!」
「白」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
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