アプリで読む

無料・登録不要

白髪小僧(夢野久作)のあらすじ・登場人物

乞食の小僧は不思議な国の王

  • 幻想

夢野久作 1922年(大正11年)11月

文字数
98,770字
読了目安
約3時間18分
表記
新字新仮名

この作品について

夢野久作が作家として世に出る前、九州日報の記者だったころに、杉山萠圓の名で1922年(大正11年)11月に誠文堂から刊行した長編童話。いつもニコニコしている乞食の白髪小僧が、川に落ちた公爵の娘美留女姫を救う場面から始まる。姫が持つ黒い表紙の書物には、持ち主の知りたいことがひとりでに文字や絵となって現れ、そこには白髪小僧がこの世の人の知らない藍丸国の王であるという物語が記されている。書物の中の物語がさらに入れ子になって語られ、世界の初めの石神の伝説、人の声を盗む赤い鸚鵡、姿を映す鏡といった道具立てに、夢と現、自分と分身の取り違えが重なっていく。語り口は「です・ます」の童話調で、物語は第三篇の途中で途切れている。

あらすじ

いつもニコニコしている乞食の白髪小僧は、川に落ちた公爵美留楼の娘美留女姫を救うが、どんな礼にも喜ばない。姫は、白髪小僧はこの世の人の知らない不思議な国の王なのだと言い、持ち主の知りたいことが文字や絵となって現れる黒い表紙の書物を読み上げる。そこには、赤い鸚鵡に導かれた姫がこの書物を手に入れたいきさつ、世界の初めに荒野でたった一人の淋しさに自らを呪った石神の伝説、そして石神の眼・口・鼻・耳の怨みが四人の魔者となって藍丸国の王を狙う話が記されていた。

書物の中の藍丸国では、白髪小僧は藍丸王であり、老臣の青眼先生が仕えている。だが王は人が変わったように、人の声を盗む赤鸚鵡を手に入れ、鸚鵡・鏡・蛇を禁じた国の古い掟を退ける。一方、湖のほとりの村の娘美留藻は、許嫁の香潮と潜った湖の底で銀の鏡を見つけ、鏡に映った美しい自分の姿に心を奪われて都へ出る。美留藻は紅木大臣の息子紅矢の衣服と名馬「瞬」を奪って紅矢になりすまし、紅木家に入り込んでいく。

紅木家では紅矢が鉄に、美紅姫が氷になって死ぬ。王の后を選ぶ御目見得では、海の女王と名乗る男装の少女が后に定まり、紅木大臣の娘濃紅姫も王宮に召されるが、やがて死ぬ。女王は青眼先生と紅木大臣の前で、自分は美留藻であり、宝蛇の力で美紅姫と入れかわったと打ち明け、青眼先生は自分が悪魔と思い込んで殺したのが美紅姫だったと知る。王も悪魔だと叫んだ紅木大臣は狂乱し、濃紅姫の亡骸を花馬車に乗せて都を駆け抜け、王は紅木家の皆殺しを命じる。青眼先生は総理大臣に任じられ、物語は止まらない花馬車の疾走を描いたところで途切れている。

登場人物

冒頭部(原文より)

 昔或る処に一人の乞食小僧が居りました。この小僧は生れ付きの馬鹿で、親も兄弟も何も無い本当の一人者で、夏も冬もボロボロの着物一枚切り、定った寝床さえありませんでしたが、唯名前ばかりは当り前の人よりもずっと沢山に持っておりました。

「白髪小僧」夢野久作(青空文庫)

末尾部(原文より)

 その間幾人の人間を轢きたおし、いくらの品物を打ち壊したかわかりませぬ。それでも狂うが上にも狂うた「瞬」の馬車はどうしても止まりませぬ。なおも足を宙に揚げて、死んでも止まらぬ勢いでどこまでもどこまでもと走りました。

「白髪小僧」夢野久作(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

青空文庫の図書カード

同じ作家の作品

近い作品