月夜と眼鏡(小川未明)のあらすじ・登場人物
月あかりの夜に訪れる客
- 幻想
- 文字数
- 3,679字
- 読了目安
- 約7分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
小川未明が1922年(大正11年)、児童雑誌「赤い鳥」に発表した短編童話。おだやかな月のいい晩、針仕事をする年老いたおばあさんのもとを、眼鏡売りの老人や、指を傷つけた見知らぬ少女が訪れる。淡い月光に包まれた静かな夜の情景の中に、ほのかな幻想と、生きとし生けるものへのやさしさをにじませた、「日本児童文学の父」未明の抒情的な小品である。
あらすじ
緑の葉に包まれた初夏の、おだやかな月のいい晩のこと。静かな町のはずれに一人暮らすおばあさんは、窓の下で針仕事をしていた。目がかすんで針に糸が通らず難儀していると、そこへ眼鏡売りの老人が訪ねてくる。老人にすすめられて眼鏡を買い求めると、なるほどよく見えるようになった。やがて今度は、指に傷を負った見知らぬ少女が、蝶のように音もなく戸口に現れる。おばあさんは少女をやさしくいたわり、傷の手当てをしてやる。だが、少女を送り出そうと振り返ると、その姿はいつのまにか足音もなく消えていた。「みんなお休み、どれ私も寝よう」――おばあさんはそうつぶやいて、家の中へ入ってゆく。ほんとうに、いい月夜だった。月の光に包まれた静かな夜のなかに、ほのかな幻想と、生きとし生けるものへのやさしさとをにじませた、未明の抒情童話の佳品である。
登場人物
- おばあさん 町のはずれに一人暮らす老女。針仕事の手を休め、訪れる者たちをやさしく迎える
- 眼鏡売りの老人 月夜におばあさんを訪ね、眼鏡を売っていく
- 少女 指に傷を負って現れ、手当てを受けたのち、音もなく姿を消す見知らぬ少女
冒頭部(原文より)
町も、野も、いたるところ、緑の葉に包まれているころでありました。 おだやかな、月のいい晩のことであります。静かな町のはずれにおばあさんは住んでいましたが、おばあさんは、ただ一人、窓の下にすわって、針仕事をしていました。 ランプの灯が、あたりを平和に照らしていました。おばあさんは、もういい年でありましたから、目がかすんで、針のめどによく糸が通らないので、ランプの灯に、いくたびも、すかしてながめたり、また、しわのよった指さきで、細い糸をよったりしていました。
「月夜と眼鏡」小川未明(青空文庫)
末尾部(原文より)
「娘はどこへいった?」と、おばあさんは、ふいに立ち止まって振り向きました。後からついてきた少女は、いつのまにか、どこへ姿を消したものか、足音もなく見えなくなってしまいました。 「みんなお休み、どれ私も寝よう。」と、おばあさんはいって、家の中へ入ってゆきました。 ほんとうに、いい月夜でした。
「月夜と眼鏡」小川未明(青空文庫)
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