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野ばら(小川未明)のあらすじ・登場人物

国境を守る二人の兵

  • 社会

小川未明 1922年(大正11年)

文字数
2,324字
読了目安
約5分
表記
新字新仮名

この作品について

小川未明の短編童話。大きな国と小さな国の国境にある石碑を、老いた兵士と若い兵士がただ二人で見張るところから始まる。二人は将棋を指し、野ばらの花の香る中で日々を過ごす。平易な言葉で書かれ、かつては平和教材として国語教科書に載った。戦争を直接描かず、静かな日常の描写で語られる寓話である。

あらすじ

大きな国と小さな国とが隣り合う、都から遠い国境の山。両国から派遣された兵はただ一人ずつで、大きな国の兵は老人、小さな国の兵は青年だった。はじめは敵か味方かとよそよそしかった二人も、話し相手もない退屈な日々のうちにすっかり仲よくなり、うららかな春の日には野ばらの咲く石碑のかたわらで毎日将棋を差した。やがて冬が来て、老人が南に住む子や孫を恋しがる冬が過ぎ、春になると、二つの国は利益問題から戦争を始める。仲むつまじかった二人は、その日から敵味方の間柄になってしまう。老人が自分の首を手柄にせよと言うと、青年は「どうして私とあなたが敵どうしでしょう」と言い残し、遠い北の戦地へ去っていった。一人残された老人は青年の身を案じて日を送るが、旅人から小さな国が負け、その兵は皆殺しになったと聞かされる。ある日うとうとと居眠りした老人は、軍隊を率いた青年が黙礼して野ばらの花をかいでゆく夢を見る。目覚めればそれは夢で、やがて野ばらも枯れ、その年の秋、老人は暇をもらって南へ帰っていった。

登場人物

冒頭部(原文より)

 大きな国と、それよりはすこし小さな国とが隣り合っていました。当座、その二つの国の間には、なにごとも起こらず平和でありました。  ここは都から遠い、国境であります。そこには両方の国から、ただ一人ずつの兵隊が派遣されて、国境を定めた石碑を守っていました。大きな国の兵士は老人でありました。そうして、小さな国の兵士は青年でありました。  二人は、石碑の建っている右と左に番をしていました。いたってさびしい山でありました。そして、まれにしかその辺を旅する人影は見られなかったのです。

「野ばら」小川未明(青空文庫)

末尾部(原文より)

 老人は、なにかものをいおうとすると目がさめました。それはまったく夢であったのです。それから一月ばかりしますと、野ばらが枯れてしまいました。その年の秋、老人は南の方へ暇をもらって帰りました。

「野ばら」小川未明(青空文庫)

名文

大きな国と、それよりはすこし小さな国とが隣り合っていました。

昔話の調子で始まる反戦童話。国境の石碑を守る老兵と若者の交流が、遠い戦争によって断ち切られる。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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