仙人(芥川龍之介)のあらすじ・登場人物
私は仙人になりたいのです
- 風刺
- 幻想
- 文字数
- 3,223字
- 読了目安
- 約6分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 大阪府
この作品について
「私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい」——大阪の口入れ屋にそう言って現れた飯炊き奉公人・権助の話。医者夫婦にまんまと二十年ただ働きさせられた権助の、落語のような一編。子ども向けに書かれた、明るい味わいの掌編である。
あらすじ
昔、大阪の町へ奉公に来た男があった。名は伝わらず、ただ飯炊き奉公なので権助とだけ呼ばれている。口入れ屋に来た権助は、番頭に「私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい」と頼んだ。呆気にとられた番頭が断ろうとすると、権助は暖簾の「万口入れ所」を指して、万というからには何事でも口入れするのが道理だ、それとも嘘を書いてあるのかと詰め寄る。困った番頭は、知り合いの医者の女房に相談した。欲深いその女房は、「二十年ただ働きさせたうえで、仙人になる術を教えてやると言えばよい」と入れ知恵する。こうして権助は医者の家で二十年、給金も取らずに働いた。年季が明けた日、約束どおり術を教えろと迫られた医者夫婦は困り果て、女房はとっさに庭の松の木に登れと命じる。高い枝まで登らせ、右手を放せ、左手も放せ——落ちれば下は石で、命はない。それで諦めるだろうという算段である。ところが権助は言われるままに両手を放した。すると彼のからだは落ちもせずに、まるで操り人形のように昼間の中空にちゃんと立ち止まったではないか。「どうも難有うございます。おかげ様で私も一人前の仙人になれました」——権助は丁寧にお辞儀をすると、静かに青空を踏みながら、だんだん高い雲の中へ昇っていってしまった。
登場人物
- 権助 仙人になりたい飯炊き奉公人
- 口入れ屋の番頭 権助の頼みに困り果てる
- 医者夫婦 権助を二十年ただ働きさせる
冒頭部(原文より)
皆さん。 私は今大阪にいます、ですから大阪の話をしましょう。 昔、大阪の町へ奉公に来た男がありました。名は何と云ったかわかりません。ただ飯炊奉公に来た男ですから、権助とだけ伝わっています。 権助は口入れ屋の暖簾をくぐると、煙管を啣えていた番頭に、こう口の世話を頼みました。 「番頭さん。私は仙人になりたいのだから、そう云う所へ住みこませて下さい。」
「仙人」芥川龍之介(青空文庫)
末尾部(原文より)
「どうも難有うございます。おかげ様で私も一人前の仙人になれました。」 権助は叮嚀に御時宜をすると、静かに青空を踏みながら、だんだん高い雲の中へ昇って行ってしまいました。 医者夫婦はどうしたか、それは誰も知っていません。
「仙人」芥川龍之介(青空文庫)
原文を読む
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