ツェねずみ(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
償ってください、償ってください
- 風刺
- 幻想
- 文字数
- 4,890字
- 読了目安
- 約10分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
何かにつけて「償ってください」と言い立てるツェねずみと、まわりの者たち——童話集「注文の多い料理店」に収められた宮沢賢治の一編。他人のせいにしてばかりいる者の姿を、笑いと苦さの入りまじった調子で描く。
あらすじ
古い家のまっくらな天井裏に、「ツェ」という名のねずみが住んでいた。ある日いたちに「戸棚の穴から金米糖がこぼれているぜ」と教えられ、喜んで駆けつけると、すでに蟻の兵隊が四重の非常線を張っていて追い返されてしまう。腹を立てたツェねずみはいたちの家へ行き、「私のような弱いものをだますなんて。償ってください」と迫った。以来、この調子である。柱に教わって行った先で失敗すれば柱に、鼬に、鉛の兵隊に、バケツに——何かあるたびに「僕のような弱いものをだますなんて、あんまりだ。償ってください」と言い立てる。はじめは気の毒がって詫びていた者たちも、しだいにうんざりし、誰もツェねずみと口をきかなくなっていった。とうとうツェねずみに話しかけるものは、台所のねずみ捕りだけになる。そのねずみ捕りが「いい半ぺんがあるから来い」と教えてくれたのだが、行ってみると半ぺんは腐っていた。「ねずみとりさん。あんまりひどいや。償ってください」——例のとおり食ってかかると、ねずみ捕りは思わず針金を鳴らすほど怒り、その拍子に餌のかぎが外れて入口が閉じてしまう。一晩じゅうわめき、地だんだを踏み、泣きつづけたツェねずみのところへ、朝、顔のまっ赤な下男がやってきて小躍りした。「しめた。しめた。とうとう、かかった。意地の悪そうなねずみだな。さあ、出て来い。こぞう」。
登場人物
- ツェねずみ 何かにつけて「償ってください」と言うねずみ
- いたち 金米糖のことを教えた
- ねずみ捕り 最後までツェねずみと話をした台所の道具
冒頭部(原文より)
ある古い家の、まっくらな天井裏に、「ツェ」という名まえのねずみがすんでいました。 ある日ツェねずみは、きょろきょろ四方を見まわしながら、床下街道を歩いていますと、向こうからいたちが、何かいいものをたくさんもって、風のように走って参りました。そしてツェねずみを見て、ちょっとたちどまって早口に言いました。 「おい、ツェねずみ。お前んとこの戸棚の穴から、金米糖がばらばらこぼれているぜ。早く行ってひろいな。」
「ツェねずみ」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
顔のまっ赤な下男が来て見て、こおどりして言いました。 「しめた。しめた。とうとう、かかった。意地の悪そうなねずみだな。さあ、出て来い。こぞう。」
「ツェねずみ」宮沢賢治(青空文庫)
原文を読む
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