山男の四月(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
山男が見たおかしな夢
- 幻想
- 風刺
- 文字数
- 5,627字
- 読了目安
- 約11分
- 表記
- 新字新仮名
この作品について
宮沢賢治が生前に刊行した唯一の童話集『イーハトヴ童話 注文の多い料理店』(1924年)に収められた一編。春の日、山で山鳥を捕らえた山男が、まどろみのなかで町へ出て、六神丸を売る支那人の薬を飲まされ、小さな薬の箱に変えられてしまう。あまり怖くもなく、どこかとぼけた味わいの冒険がユーモラスに進み、結末には夢のなかのできごとという落ちがつく。賢治の童話集に登場する「山男」ものの代表的な一編である。
あらすじ
春の日、金いろの眼の山男は、にしね山のひのき林で山鳥を捕らえ、日だまりの枯れ芝に寝ころんで空を眺めながら、飴とはうまいものだ、雲助とは雲のことだなどととりとめもなく考える。やがて頭が軽くなり、ふらふらと町の入口に着き、木樵の姿に化けて魚屋の軒先の赤い章魚をつくづく眺める。そこへ支那人が現れ、長生きの薬だと言って小さな赤い水薬を勧める。山男はそれを飲んで、六神丸という小さな薬の箱に変えられてしまい、荷物の行李に入れられる。行李のなかでは、同じようにされた人間たちが泣いており、丸薬を飲めばもとに戻れると教えられる。山男は怒って、町に入ったらおまえを怪しいやつとどなるぞと脅すが、泣く支那人を気の毒に思って約束を取りやめる。やがて支那人が子供に薬を勧めはじめたとき、山男は丸薬をのんでもとの姿に戻る。支那人は慌てて丸薬だけをのみ、頭が延びて背が高くなり、山男に掴みかかってくる。助けてくれと叫んだところで、山男は目を覚ます。すべては夢であった。山男は大きなあくびをして、夢のなかのことだと言い、また一つあくびをする。
登場人物
- 山男 金いろの眼の大男。山鳥を捕らえ、日だまりで夢を見る
- 支那人(陳) 六神丸を売り歩く行商人。人を薬に変えて売ろうとする
- 行李のなかの者たち 薬に変えられた人間たち。泣いてばかりいる
冒頭部(原文より)
山男は、金いろの眼を皿のようにし、せなかをかがめて、にしね山のひのき林のなかを、兎をねらってあるいていました。 ところが、兎はとれないで、山鳥がとれたのです。 それは山鳥が、びっくりして飛びあがるとこへ、山男が両手をちぢめて、鉄砲だまのようにからだを投げつけたものですから、山鳥ははんぶん潰れてしまいました。
「山男の四月」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
「ええ、畜生、夢のなかのこった。陳も六神丸もどうにでもなれ。」 それからあくびをもひとつしました。
「山男の四月」宮沢賢治(青空文庫)
名文
山男は仰向けになって、碧いああおい空をながめました。お日さまは赤と黄金でぶちぶちのやまなしのよう、かれくさのいいにおいがそこらを流れ、すぐうしろの山脈では、雪がこんこんと白い後光をだしているのでした。
山鳥をとった山男が、日だまりのかれ芝に寝ころんで春の空を見上げる場面。太陽を「やまなし」にたとえる、のびやかな四月の景色。
原文を読む
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