妖虫(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
蠍の紋章の連続殺人
- ミステリ
- 怪奇
- 文字数
- 120,325字
- 読了目安
- 約4時間1分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1933年(昭和8年)から翌年にかけて「キング」に連載した長編。蠍(さそり)を思わせる「妖虫」の紋章を残し、美貌の若い女性たちを次々と血祭りにあげていく、正体不明の怪人。ミス・トウキョウ、女優、女流ヴァイオリニスト——うるわしい娘たちが餌食となる連続殺人に、猟奇好きの大学生・相川守や老探偵・三笠龍介が立ち向かう。怪奇と本格推理を融合させた、乱歩長編の一つである。
あらすじ
熱帯にすむ毒虫・蠍——獲物に飛びかかり、尻尾の針で猛毒を注ぐこの妖虫の名を冠した、正体不明の怪人が現れた。そいつは、背を曲げて敵に飛びかかろうとする蠍の醜い姿を自らの紋章とし、その徴だけを見せつけて、決して正体を掴ませない。新聞が「妖虫事件」と書き立てたその事件は、美貌をうたわれた若い女性たちが、次々と血祭りにあげられていく、恐るべき連続殺人だった。有名女優の春川月子、ミス・トウキョウの相川珠子、美貌のヴァイオリニスト桜井品子——世に知られた美しい娘たちばかりが狙われる。この妖魔に立ち向かうのは、猟奇好きで「探偵さん」とあだ名される大学生・相川守と、白髪の老探偵・三笠龍介。やがて明かされる犯人の正体と、その凄惨な動機——それは、ある女性の深い悲痛から生まれた、許されざる復讐だった。事件を通じて、相川守は探偵小説の面白さと、現実の犯罪の恐ろしさとの違いを思い知り、蔵書の探偵本を一まとめに売り払ってしまう。怪奇と本格推理が交錯する、乱歩の長編である。
登場人物
- 妖虫 蠍の紋章を残す正体不明の怪人
- 相川守 猟奇好きの大学生
- 三笠龍介 白髪の老探偵
- 殿村京子 相川家の家庭教師
冒頭部(原文より)
熱帯地方に棲息する蠍という毒虫は、蜘蛛の一種であるけれど、伊勢海老を小さくした様な醜怪な姿をしていて、どんな大きな相手にも飛び掛って来る、凶悪無残の妖虫である。そいつが獲物を見つけると、頭部についている二本の鋏で、相手をグッと圧えつけて置いて、節になった尻尾を、クルクルと弓の様に醜くそらせて、その先端の鋭い針で、敵の体内に恐ろしい毒汁を注射するのだ。
「妖虫」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
彼は妖虫殺人事件に於て、あらゆる苦しみと悲しみとを味わった。もう沢山だ。探偵小説なんて呪われてあれ! そこで、彼は沢山の探偵本の蔵書を、一纒めにして、屑屋に売払ってしまったということである。
「妖虫」江戸川乱歩(青空文庫)
原文を読む
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