狂人は笑う(夢野久作)のあらすじ・登場人物
笑いながら語られる二つの話
- 怪奇
- ミステリ
- 文字数
- 12,855字
- 読了目安
- 約26分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
夢野久作が1932年(昭和7年)7月の「文学時代」に発表した短編。「青ネクタイ」「崑崙茶」の二篇から成り、どちらも一人の語り手が聞き手に向かって一方的に話し続ける独白体で書かれている。前者では、土蔵の二階に閉じ込められていたという若い女が、人形の腹から出てきた新聞の切れ端のことを笑いながら語る。後者では、不眠に悩む入院中の学生が看護婦長を呼び止めて、隣の寝台の中国人留学生に呪われていると訴え、崑崙山で摘まれる幻の茶の由来を語り出す。語り手の言葉の端々に生じるずれから、じわじわと不気味さがにじみ出てくる構成をとる。
あらすじ
「青ネクタイ」では、若い女が笑いながら身の上を語る。女学校を出てから叔父の家の土蔵の二階に閉じ込められていた彼女は、ある日、鼠に腹を破られた人形の中から新聞の切れ端を見つける。そこには、叔父が母を殺して財産を奪い、彼女を発狂させようとしていることを名探偵青ネクタイ氏が暴き、彼女は青ネクタイ氏と結婚する、と書かれていた。
彼女は鉄格子を曲げて土蔵を抜け出し、眠っている叔父を刀で斬り殺して、駆けつけた大勢を相手に暴れたあげく取り押さえられる。病院の院長に、叔父はまだ生きていて裁判で争っているから狂人のふりをしてここに隠れていよと言われたと信じる彼女は、毎日窓の前を青いネクタイで通る禿頭の院長こそ変装した青ネクタイ氏だと気づき、笑いが止まらない。
「崑崙茶」では、入院中の学生が看護婦長を呼び止め、隣の寝台の留学生が自分の鎮静剤に崑崙茶のエキス「茶精」を混ぜて眠らせまいとしていると訴える。中国の富豪たちが猿に新芽を摘ませ、身代をつぶすまで崑崙山へ茶を飲みに通うという話を長々と語った学生は、婦長が祖父に習ったという飛去来術で目を閉じて十まで数える。目を開けると、留学生も寝台も婦長も消え、そこは寝台一つしかないコンクリートの部屋で、薬も苦くなくなっていた。学生は魔法で部屋と薬が替わったのだと感心して、高笑いする。
登場人物
- 「青ネクタイ」の女 土蔵に閉じ込められていたと語る若い女。名探偵青ネクタイ氏を待つ
- 「崑崙茶」の学生 不眠症で入院している学生。中国の不思議な話を好む
- 看護婦長 学生の訴えを聞く。漢学者の祖父を持つという
冒頭部(原文より)
「ホホホホホホホ……」 だって可笑しいじゃありませんか。 ……妾はねえ。失恋の結果世を儚なみて、何度も何度も自殺しかけたんですってさあ。
「狂人は笑う」夢野久作(青空文庫)
末尾部(原文より)
……アッハッハッハッハッ。やっと解った。 これが飛去来術なんだ。今の間に室と薬がかわったんだ。 ……エライもんだなあ婦長さんの魔法は……まるで天勝みたいだ。有難い有難い。お蔭でこれから安心して眠れる。 ……ああ驚いた……。 面白い国だなあ支那という国は……。 アッハッハッハッハッハッハッ……。
「狂人は笑う」夢野久作(青空文庫)
原文を読む
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