目羅博士の不思議な犯罪(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
月光の妖術と目羅博士
- 怪奇
- ミステリ
- 文字数
- 15,498字
- 読了目安
- 約31分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
江戸川乱歩が1931年(昭和6年)、「文芸倶楽部」の増刊に発表した怪奇短編。探偵小説の筋を練るために東京をぶらつく「私」が、上野動物園で出会った一人の青年から、世にも奇怪な「目羅博士」の犯罪を聞かされる。「月光の妖術」と呼ばれるその手口が、語り手をも幻惑してゆく、乱歩怪奇の名短編である。
あらすじ
探偵小説の筋を考えるために東京の名所をぶらつくのを常とする「私」は、原稿の催促を逃れて市内をさまよっていたある日の夕方、上野動物園で、ひっそりと静まり返った館内で一人の妙な青年に出会う。その青年が語り出したのは、「目羅博士」なる人物にまつわる、世にも不思議な犯罪の物語だった。ある建物で、向かい合った窓に住む者たちが、次々と同じような謎の自殺をとげていく。その裏にいたのが、目羅博士。彼は、鏡と巧みな暗示を用いて、向かいの窓の住人に自分の姿を「真似」させ、ついには首吊り自殺までも模倣させて、思うままに人を死に追いやっていたのだ。月の光のもとで語られるこの「月光の妖術」の物語に、「私」はすっかり引き込まれる。ところが語り終えると、青年はサッと立ち去ってしまう。もやの中へ消えていくそのうしろ姿を見送りながら、「私」は疑う——青年と出会ったことも、その物語も、はては青年その人さえも、みな「月光の妖術」が生み出したあやしき幻ではなかったか、と。怪奇と幻想が溶け合う、乱歩短編の名品である。
登場人物
- 私 探偵小説家
- 目羅博士 鏡と暗示で人を模倣自殺に追いやる男
- 青年 目羅博士の物語を語る人物
冒頭部(原文より)
私は探偵小説の筋を考える為に、方々をぶらつくことがあるが、東京を離れない場合は、大抵行先が極っている。浅草公園、花やしき、上野の博物館、同じく動物園、隅田川の乗合蒸汽、両国の国技館。今もその国技館の「お化け大会」という奴を見て帰った所だ。
「目羅博士の不思議な犯罪」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
私は、もやの中へ消えて行く、彼のうしろ姿を見送りながら、さんさんと降りそそぐ月光をあびて、ボンヤリと捨石に腰かけたまま動かなかった。 青年と出会ったことも、彼の物語も、はては青年その人さえも、彼の所謂「月光の妖術」が生み出した、あやしき幻ではなかったのかと、あやしみながら。
「目羅博士の不思議な犯罪」江戸川乱歩(青空文庫)
原文を読む
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