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恐怖王(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

棺を積んだ車が走り廻る

  • ミステリ
  • 怪奇

江戸川乱歩 1931年(昭和6年)6月 「講談倶楽部」

文字数
66,069字
読了目安
約2時間12分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都
  • 神奈川県

この作品について

棺を積んだ葬儀自動車が、行き先もなく東京市中を走り廻っている——その異様な導入から始まる乱歩の通俗長編。死骸盗賊、ゴリラの檻に囚われる男、鎌倉の空に書かれた「恐怖王」の文字。小説家・大江蘭堂と美貌の夏子未亡人を巻き込みながら怪事件は連鎖してゆく。読者を引きずり回す乱歩の通俗長編の特色が濃く出た一作。

あらすじ

一台の金ピカ葬儀自動車が、どこへという当てもないらしく東京市中をグルグルと走り廻っていた。車内にはよく見ると、確かに白布で覆った寝棺がのせてある。棺の中に死人が入っているのかどうかは分からぬけれど、附添いの自動車もなくただグルグルと町から町へ走り廻っているというのは如何にも変だ——物語はこの不可解な光景から動きだす。やがて墓地から死骸が消え、死骸盗賊の噂が市中を走る。……事件に引き込まれるのは、小説家の大江蘭堂と、美貌の夏子未亡人である。ゴリラの檻、怪画家を名乗る男、毒薬の注射、そして鎌倉の空に「恐怖王」の三文字を描いてみせる怪飛行機。次々に繰り出される怪異と危機のなかで、蘭堂は事件の背後にひそむ意志を追う。結末で一応の決着はつくものの、語り手はそこに疑いを残す。本当の恐怖王はまだどこかに生き永らえていて、次の大それた計画を目論んでいるのではないか。夏子未亡人は、蘭堂と恋をしたばっかりに、その筋を油断させるための替え玉に使われたのではないか。ゴリラを殺すはずの毒薬も、実は一時人事不省に陥らせて檻から逃げやすい病院へ移させる手段だったのではないか。飛行機の操縦者はいくら探しても現れなかった。これらの疑いは、永久に解き難き謎として残される。

登場人物

冒頭部(原文より)

死骸盗賊  一台の金ピカ葬儀自動車が、どこへという当てもないらしく、東京市中を、グルグルと走り廻っていた。  車内には、よく見ると、確に白布で覆った寝棺がのせてある。棺の中に死人が入っているのかどうかは分らぬけれど、棺をのせた葬儀車が、附添いの自動車もなく、ただグルグルと町から町へ走り廻っているというのは如何にも変だ。

「恐怖王」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 だが、それは永久に解き難き謎であった。再び「恐怖王」が活躍を始めるか、行衛不明のゴリラ男が姿を現わすか、それとも亦、あの鎌倉の空に「恐怖王」の文字を描いた怪飛行機の操縦者が名乗って出るまでは(不思議なことに、その操縦者は、いくら探しても、いつまでたっても現われて来なかったが)これらの疑いは、いまわしき幻想でしかなかった。

「恐怖王」江戸川乱歩(青空文庫)

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