鬼(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物
信州の寒村と生腕の怪
- ミステリ
- 怪奇
- 文字数
- 30,146字
- 読了目安
- 約1時間
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 長野県
この作品について
江戸川乱歩が1931年(昭和6年)から翌年にかけて「キング」に連載した中編。探偵小説家の殿村昌一が、四方を山にとざされた郷里・長野の寒村へ帰省したところ、切り落とされた「生腕」をめぐる怪事件に巻き込まれる。陰鬱な山村を舞台に、怪奇の気配と本格推理とをないまぜにした、乱歩らしい一編である。
あらすじ
探偵小説家の殿村昌一は、その夏、四方を山にとざされ、段畑ばかりで暮らしを立てる、郷里・長野県のS村へ帰省していた。日中が平地の半分ほどしかなく、朝霧に閉ざされたこの陰鬱な寒村の空気は、かえって探偵小説家の好みに合っていた。ところが、この静かな山村で、切り落とされた人間の腕——「生腕」が発見されるという、奇怪な事件が持ち上がる。誰の腕なのか、なぜそんなものが現れたのか。都会を離れた寒村を舞台に、怪奇の気配のただよう謎が立ちあらわれる。探偵小説家である殿村は、みずからの推理の腕を試すように事件に関わっていく。錯綜する謎がやがて解き明かされると、無邪気に兜を脱ぐ予審判事の姿があり、「これで探偵小説愛読者が一人ふえたというものだね」と、殿村もまた朗らかに笑うのだった。山村の陰鬱な情趣と本格推理を組み合わせた、乱歩の中編である。
登場人物
- 殿村昌一 帰省中の探偵小説家
冒頭部(原文より)
探偵小説家の殿村昌一は、その夏、郷里長野県のS村へ帰省していた。 S村は四方を山にとざされ、殆ど段畑ばかりで暮しを立てている様な、淋しい寒村であったが、その陰鬱な空気が、探偵小説家を喜ばせた。 平地に比べて、日中が半分程しかなかった。朝の間は、朝霧が立ちこめていて、お昼頃ちょっと日光がさしたかと思うと、もう夕方であった。
「鬼」江戸川乱歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
予審判事は無邪気に兜を脱いだ。 「ハハハ……、そいつは有難い。これで探偵小説愛読者が一人ふえたというものだね」 殿村も一倍の無邪気さで、朗かに笑った。
「鬼」江戸川乱歩(青空文庫)
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