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白髪鬼(江戸川乱歩)のあらすじ・登場人物

西洋種の復讐譚の翻案

  • 怪奇
  • ミステリ

江戸川乱歩 1931年(昭和6年)4月 「冨士」

文字数
112,081字
読了目安
約3時間44分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

江戸川乱歩が1931年(昭和6年)、「冨士」に連載した長編。イギリスの作家マリー・コレルリの「ヴェンデッタ」——黒岩涙香が「白髪鬼」の題で翻案したその物語を、乱歩がさらに自分流に改作したものである。妻と親友に裏切られ、生きながら墓に葬られた男が、白髪の鬼と化して復讐へ向かう。西洋種の復讐譚を、乱歩が怪奇小説として蘇らせた一編である。

あらすじ

刑務所の教誨師と速記者を前に、一人の男が、その奇怪きわまる身の上話を語りはじめる。春のようになごやかだった彼の半生は、ある恐ろしい出来事によって、突然断ち切られた。それ以来の彼は、「地獄の底から這い出して来た、一匹の白髪の鬼」——蛇のような執念にとらわれた殺人者となったのだ。彼は、深く信じていた妻・瑠璃子と、親友の川村とに裏切られ、あろうことか生きながら墓に葬られてしまう。九死に一生を得て墓から這い出した彼は、白髪の鬼と化し、素性を隠して二人に近づき、周到に恐ろしい復讐を遂げていく。悪に報いるに悪をもってし、その報復を楽しみさえした彼だったが、十数年の獄中生活の果てにたどりついたのは、深い悔恨だった。「わしは復讐を楽しみすぎた。わしこそ悪人であった」——。イギリスの復讐譚を、乱歩が日本の怪奇小説として練り直した、異色の翻案長編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 今わしの前には、この刑務所の親切な教誨師が、わしの長物語が始まるのを、にこやかな笑顔で待受けておられる。わしの横手には、教誨師が依頼してくれた、達者な速記者が、鉛筆を削って、わしの口の動き出すのを待構えている。  春の様になごやかであったわしの半生は、突然、歴史上に前例もない様な、恐ろしい出来事によって、パッタリと断ち切られてしまった。それからのわしは、地獄の底から這い出して来た、一匹の白髪の鬼であった。

「白髪鬼」江戸川乱歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 わしは復讐を楽しみすぎた。わしこそ悪人であった。瑠璃子も川村も、あれ程の恐ろしい報いを受けることはなかったのだ。考えて見ると、彼等には実に可哀相なことであった。又、わし自身にとっても、無駄な努力をしたものだと。  十何年の獄中生活が、わしをこんな内気な男にしてしまったのですよ。皆さん。

「白髪鬼」江戸川乱歩(青空文庫)

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