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文壇一夕話(田山花袋)のあらすじ・登場人物

花袋が語る現実と経験の文芸観

田山花袋 1909年(明治42年)11月 「文章世界」

文字数
3,018字
読了目安
約6分
表記
新字旧仮名

この作品について

「現実といふ意味」「経験といふ意味」「イブセン」「『それから』の評」など、小見出しを立てて文芸への考えを短く並べた田山花袋の評論集成。現実を自分の経験に引き寄せて書くという主張に、漱石やアンドレーフへの率直な批評、国民新聞の記事への反論が添えられる。

あらすじ

田山花袋が、明治四十二年に小見出しを立てて文壇への所感を書き連ねた短評集。冒頭では、新興文芸の基礎にある「現実」が空疎で抽象的なものになりがちだと指摘し、自分が書きたいのは、個人が実際に接触して得た現実、すなわち私自身の現実だと述べる。子供への思いは「可愛い」でも「憎い」でもなく本能の関係だと語り、生若い似非デカダンには怖気を振るうと言う。イブセンの作風を雪舟の画にたとえた長谷川天渓の言を引き、その経験の深さを評価する。夏目漱石の『それから』は説明的で学究的に過ぎると感じ、星湖の『一切の事』は暗い筆つきが色に合っていると好む。アンドレーフの『七刑人』には期待外れだったと述べ、日本にはロシアのような人物がいないとも書く。最後に、国民新聞の『東京だより』が当今の傾向を危ぶんだことに、作家は現象を描くのであって主張や経世論ではないと反論する。

登場人物

冒頭部(原文より)

 現実に接触したところに今の新興文芸は生れたのだと言はれる。現実なるものゝ意味をよく了解することの必要なるは言ふ迄もない。

「文壇一夕話」田山花袋(青空文庫)

末尾部(原文より)

 作家は感官に触れ、胸中に映つた事々物々を、たゞ現象として取扱ふのみである。要するに現象である。主張ではない。又経世論では無論ない。経世者がその現象に怖毛を振ふのは勝手だが、それを以て芸術に対さうとするのは、読者としては殆ど無価値である。探偵小説を読んで盗賊の真似をするといふやうな読者――さうした眼と心を以て芸術に対する読者をわが賢明なる『東京だより』記者に発見しやうとは、私は夢にも思はなかつた。

「文壇一夕話」田山花袋(青空文庫)

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