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『注文の多い料理店』序(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物

すきとおった風をたべ、日光をのむ

宮沢賢治 1924年(大正13年)12月 「書き下ろし」

文字数
585字
読了目安
約1分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

生前唯一の童話集「注文の多い料理店」に賢治自身が寄せた序文。「きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむ」——わずか一枚ほどの文章のなかに、賢治の童話がどこから来たのかが、これ以上ないほど美しく語られている。賢治文学の入口として、しばしば作品本体以上に引かれる名文である。

あらすじ

「わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます」。そう書きおこして、賢治は、はたけや森の中でひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や宝石いりのきものに変わっているのをたびたび見た、と続ける。自分はそういうきれいなたべものやきものが好きなのだ、と。これらのお話は、みんな林や野はらや鉄道線路やらで、虹や月あかりからもらってきたものです——かしわばやしの青い夕方をひとりで通りかかったり、十一月の山の風のなかにふるえながら立ったりすると、どうしてもこんな気がしてしかたない、そのとおりを書いたまでなのだと賢治は言う。だから、あなたのためになるところもあるだろうし、ただそれっきりのところもあるだろう。わけのわからないところもあるだろうが、そんなところは自分にもわけがわからない。それでも——「わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません」。大正十二年十二月二十日、宮沢賢治。

冒頭部(原文より)

 わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。  またわたくしは、はたけや森の中で、ひどいぼろぼろのきものが、いちばんすばらしいびろうどや羅紗や、宝石いりのきものに、かわっているのをたびたび見ました。  わたくしは、そういうきれいなたべものやきものをすきです。

「『注文の多い料理店』序」宮沢賢治(青空文庫)

末尾部(原文より)

 けれども、わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。   大正十二年十二月二十日宮沢賢治

「『注文の多い料理店』序」宮沢賢治(青空文庫)

名文

わたしたちは、氷砂糖をほしいくらいもたないでも、きれいにすきとおった風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。

生前に刊行された唯一の童話集の序の書き出し。物の豊かさがなくとも自然から美しいものを受け取れるという、賢治の世界観が語られる。

わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまい、あなたのすきとおったほんとうのたべものになることを、どんなにねがうかわかりません。

序の結び。自らの童話を、読者の心の糧となる「すきとおったほんとうのたべもの」として差し出す、書き手としての切実な願い。

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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