だしの取り方(北大路魯山人)のあらすじ・登場人物
削り下手は、死んだだしが出る
- 文字数
- 2,471字
- 読了目安
- 約5分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
「削り下手なかつおぶしは、死んだだしが出る」——美食家・北大路魯山人が、かつおぶしの選び方と削り方、そして昆布だしの引き方を説いた実践の一文。まずよく切れる鉋を持て、というのがその第一の教えである。
あらすじ
よいかつおぶしは、叩き合わせると拍子木のようにカンカンと鳴る。虫の入った木のようにポトポトと湿った音のするものは悪いかつおぶしだ——魯山人はまず見分け方から説き起こす。本節よりは亀節がよい。そして何より大切なのは削り方である。削ったかつおぶしが雁皮紙のように薄く、ガラスのような光沢を持っていなければ、よいだしは出ない。そのためには切れ味のよい鉋が要る。百の家庭のうち九十九までがいい鉋を持っていまい、料理を講義する人でも持っていないのだから——と魯山人の筆は容赦がなく、大工の使う鉋を一つ買えと勧める。だしを取るときは、グラグラとたぎった湯にサッと入れたその瞬間にもう充分にだしはできている。いつまでもクタクタ煮るのは味をそこなうばかりで、二番だしなどにしてはいけない。後半は昆布だしに移る。魚の料理には昆布だしにかぎる、味のダブルはくどい、と説き、水でぬらして表面をいたわり、熱湯にサッと通すだけでよいと具体的に教える。長く煮るのは愚の骨頂——京都に伝わる「引出し昆布」の話まで、日本料理の土台をなす技が簡潔に語られる。
冒頭部(原文より)
かつおぶしはどういうふうに選択し、どういうふうにして削るか。まず、かつおぶしの良否の簡単な選択法をご披露しよう。よいかつおぶしは、かつおぶしとかつおぶしとを叩き合わすと、カンカンといってまるで拍子木か、ある種の石を鳴らすみたいな音がするもの。虫の入った木のように、ポトポトと音のする湿っぽい匂いのするものは悪いかつおぶし。
「だしの取り方」北大路魯山人(青空文庫)
末尾部(原文より)
こぶを湯にさっと通したきりで上げてしまうのは、なにか惜しいように考え、長くいつまでも煮るのは愚の骨頂、昆布の底の甘味が出て、決して気の利いただしはできない。京都辺では引出し昆布といって、鍋の一方から長い昆布を入れ、底をくぐらして一方から引き上げるというやり方もあるが、こういうきびしいやり方だと、どんなやかましい食通たちでも、文句のいいようがないということになっている。
「だしの取り方」北大路魯山人(青空文庫)
原文を読む
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