原爆詩集(峠三吉)のあらすじ・登場人物
ちちをかえせ ははをかえせ
- 社会
- 文字数
- 20,182字
- 読了目安
- 約40分
- 表記
- 新字新仮名
- 舞台
- 広島県
この作品について
「ちちをかえせ ははをかえせ」——広島で被爆した詩人・峠三吉が、自らも原爆症に苦しみながら書き上げた詩集。序詩は広島平和記念公園の碑に刻まれ、世界でもっとも読まれた原爆の詩となった。惨状の直視と、それを二度と繰り返させまいとする意志が、削ぎ落とされた言葉で結ばれている。
あらすじ
「一九四五年八月六日、広島に、九日、長崎に投下された原子爆弾によって命を奪われた人」——献辞に続く序詩は、日本語で書かれた詩のなかでもっとも知られた一節となった。「ちちをかえせ ははをかえせ/としよりをかえせ/こどもをかえせ/わたしをかえせ わたしにつながる/にんげんをかえせ/にんげんの にんげんのよのあるかぎり/くずれぬへいわを/へいわをかえせ」。続く「八月六日」は、瞬時に消えた三万の街頭、崩れた橋、焦げた満員電車、ボロ切れのような皮膚を垂れて泣きながら群れ歩いた裸体の行列を、視線をそらさずに書きつける。「死」「炎」「盲目」「墓標」など、以下の詩篇は、被爆のその瞬間から、屍臭のなかを生き延びた日々、原爆症で倒れてゆく友、そして占領下で語ることを禁じられた沈黙へと及ぶ。「よびかけ」「一九五〇年の八月六日」といった後半の詩では、ふたたび戦争へ向かおうとする時代への抗議が正面から歌われる。跋文で峠は、この詩集があまりに貧しく力よわいことを恥じたと記しながら、それでも「すべての人間を愛する人たちへの贈り物であると共に、そうした人々への警告の書でもある」と結んでいる。
冒頭部(原文より)
――一九四五年八月六日、広島に、九日、長崎に投下された原子爆弾によって命を奪われた人、また現在にいたるまで死の恐怖と苦痛にさいなまれつつある人、そして生きている限り憂悶と悲しみを消すよしもない人、さらに全世界の原子爆弾を憎悪する人々に捧ぐ。 序 ちちをかえせ ははをかえせ としよりをかえせ こどもをかえせ わたしをかえせ わたしにつながる にんげんをかえせ にんげんの にんげんのよのあるかぎり くずれぬへいわを へいわをかえせ
「原爆詩集」峠三吉(青空文庫)
末尾部(原文より)
然しこれは私の、いや広島の私たちから全世界の人々、人々の中にどんな場合にでもひそやかにまばたいている生得の瞳への、人間としてふとしたとき自他への思いやりとしてさしのべられざるを得ぬ優しい手の中へのせい一ぱいの贈り物である。どうかこの心を受取って頂きたい。 この詩集はすべての人間を愛する人たちへの贈り物であると共に、そうした人々への警告の書でもある。
「原爆詩集」峠三吉(青空文庫)
名文
ちちをかえせ ははをかえせ としよりをかえせ こどもをかえせ わたしをかえせ わたしにつながる にんげんをかえせ にんげんの にんげんのよのあるかぎり くずれぬへいわを へいわをかえせ
被爆した詩人が詩集の巻頭に置いた「序」。ひらがなだけの短い呼びかけで、奪われたものすべてを返せと訴える。
原文を読む
原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。