凾館港春夜光景(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
海霧に煙る函館の春の夜
- 文字数
- 711字
- 読了目安
- 約1分
- 表記
- 新字旧仮名
- 舞台
- 北海道
この作品について
春の夜の函館港を、色と音と造語をふんだんに使って描いた賢治の口語詩。日本海に傾く七日の月、海霧、桜の梢の電灯、船の汽笛と祭りの人々が、鉱物や化学の語とともに重ねられる。「オダルハコダテガスタルダイト」など音を遊ぶ囃子ことばが入り、賢治の詩の中でも色彩感と諧謔に富む。
あらすじ
地球照のある七日の月が海峡の西にかかり、岬の山々が雲をかぶるころ、港の夜が始まる。月は喜歌劇のような赤い灯や虹の汁に照らされ、春と夏が混ざり、水と陸の市場がつくられる。「つじうらはっけがきたわいな」と、地名と鉱物の名を並べたような囃子ことばが流れる。桜の梢には氷のような電灯が盛られ、釧路の親方連は酒を汲み、魚の歯のような男が灯影を狂おしく過ぎる。ヴァイオリンと銅鑼、三味線と笛、巻貝のスケルツォが夜空にふるえ、歌手たちが踊る。やがて海霧が再び襲い、丘と広場をつつみ、雨に月の光が滲み、白いテントが濡れて、青いえりのフランス兵が桜の枝を捧げて笑う。汽笛がふるえ犬が吠えるころ、月は日本海の雲にかくれてゆく。
冒頭部(原文より)
地球照ある七日の月が、 海峡の西にかかって、 岬の黒い山々が 雲をかぶってたゞずめば、 そのうら寒い螺鈿の雲も、 またおぞましく呼吸する そこに喜歌劇オルフィウス風の、 赤い酒精を照明し、
「凾館港春夜光景」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
またときめかす花梅のかほり、 青いえりしたフランス兵は 桜の枝をさゝげてわらひ 船渠会社の観桜団が 瓶をかざして広場を穫れば 汽笛はふるひ犬吠えて 地照かぐろい七日の月は 日本海の雲にかくれる
「凾館港春夜光景」宮沢賢治(青空文庫)
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