『春と修羅』補遺(宮沢賢治)のあらすじ・登場人物
春と修羅からこぼれた詩篇たち
- 文字数
- 6,181字
- 読了目安
- 約12分
- 表記
- 新字旧仮名
この作品について
詩集『春と修羅』の刊行時に収められなかった詩稿をまとめた補遺。『春と修羅』と同じころの、1920年代初めの口語詩が並ぶ。「手簡」のように雨の中の心象をつづった作品など、完成した詩集とは別の角度から賢治の心象スケッチの手法を伝える。
あらすじ
冒頭の「手簡」(一九二二年五月十二日の日付)は、雨がぽしゃぽしゃと降り、心象の明滅を切れ切れに降る透明な雨だと語りかける。胸腔は暗く熱く、醗酵をはじめたようで、ゴム引きの青泥色のマントでゆっくり歩くのはつらい、と書いたあと、あなたは今どこにいるのか、廊下を十回往来して一緒に冷たい板を踏んでほしい、と呼びかける。続く〔堅い瓔珞はまっすぐに下に垂れます〕では、天人たちの水素よりも透明な悲しみの叫びが、氷の鎗のような姿で描かれる。巻末近くの詩では、青ざめた夕方に人々が「うさぎうま」に乗り、金のばらが光る野を犬と横切ってゆく。短い詩ごとに色彩と音が際立つ。
冒頭部(原文より)
手簡 雨がぽしゃぽしゃ降ってゐます。 心象の明滅をきれぎれに降る透明な雨です。 ぬれるのはすぎなやすいば、 ひのきの髪は延び過ぎました。 私の胸腔は暗くて熱く もう醗酵をはじめたんぢゃないかと思ひます。 雨にぬれた緑のどてのこっちを
「『春と修羅』補遺」宮沢賢治(青空文庫)
末尾部(原文より)
鳥ががあがあとんでゐるとき またまっしろに雪がふってゐるとき 青ざめたそらの夕がたは みんなはいちれつ青ざめたうさぎうまにのり きらきら金のばらのひかるのはらを 犬といっしょによこぎって行く 青ざめたそらの夕がたは みんなはいちれつ青ざめたうさぎうまにのり
「『春と修羅』補遺」宮沢賢治(青空文庫)
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