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ワンダ・ブック――少年・少女のために――(ホーソーン)のあらすじ・登場人物

屋敷で語るギリシア神話

  • 幻想
  • 翻訳

ホーソーン 訳者 三宅幾三郎 1937年(昭和12年)9月

文字数
147,775字
読了目安
約4時間56分
表記
新字新仮名

この作品について

『緋文字』で知られるアメリカの作家ナサニエル・ホーソーンが1852年に出した、子どものためのギリシア神話の再話集 A Wonder Book for Boys and Girls を、三宅幾三郎が訳して1937年(昭和12年)に岩波文庫から刊行したもの。マサチューセッツ州の田舎屋敷タングルウッドを舞台に、大学生ユースタス・ブライトが、プリムロウズやカウスリップといった花の名で呼ばれる子どもたちにせがまれて話を聞かせるという枠物語の形をとる。語られるのは、ペルセウスとゴルゴン、ミダス王、パンドラの箱、ヘラクレスと金の林檎、フィレモンとバウキス、ベレロポンとキマイラの六編。著者の「はしがき」にあるとおり、神話の外形に空想を交えて自由に手を加え、季節ごとの屋敷の情景と子どもたちの合いの手が話と話のあいだをつないでいる。

あらすじ

秋の朝、霧の晴れるのを待つタングルウッドの玄関先で、大学生ユースタス・ブライトは、従弟妹たちにせがまれて新しい話を語り始める。最初は「ゴーゴンの首」。悪い王ポリデクティーズに命じられ、見る者を石に変える怪物メドゥーサの首を取りに出た若者パーシウスが、不思議な旅人クイックシルヴァの助けを得て冒険に挑む。小川のほとりのシャドウ・ブルックでは、触れるものすべてが金になる力を得た欲深いマイダス王と、その小さな王女の「何でも金になる話」。雨の日の遊戯室では、子どもしかいなかった大昔、パンドーラが開けてはならない箱に手をかける「子供の楽園」。冬のいろりばたでは、ヘスペリディーズの庭の金の林檎を求めて旅するヘラクレスが、天を支える巨人アトラスと出会う「三つの金のりんご」。季節が移った丘の中腹では、貧しくとも旅人をもてなすフィリーモン爺さんとボーシス婆さんの「不思議の壺」。最後に禿げた山の頂で、若者ビレラフォンが天馬ペガッサスを手なずけ、火を吐く怪物カイミアラに立ち向かう「カイミアラ」が語られる。話のたびに、生意気なプリムロウズはユースタスをからかい、小さな子たちは夢中で聞き入る。山を下りながら、ユースタスはこれらの話を本にして世に出すのだと意気込み、一行はにぎやかにタングルウッドへ帰っていく。

登場人物

冒頭部(原文より)

 天気のいい、秋の或る朝のこと、タングルウッドという田舎のお屋敷の玄関先に、背の高い青年を取りかこんで、愉快な子供達の一群が集まっていた。彼等は木の実拾いに出かけることになっていたので、丘の斜面から霧が晴れ上がって、お日様が野原や牧場の上一杯に、それから、色とりどりに紅葉した森の奥まで、小春日のあたたかさをふりまいてくれるのを、今か今かと待っているのであった。この美しい、気持のいい世界の様子を更に引立てて見せる上天気のうちでも、今日はまた飛切りの上天気になりそうだった。しかし、今のところ、霧はまだ谷間の長さ一杯、幅一杯に立ちこめて、お屋敷はそれに浮くように、なだらかに盛り上がった丘の上に建っているのであった。

「ワンダ・ブック――少年・少女のために――」ホーソーン(青空文庫)

末尾部(原文より)

『これらの不思議な、面白い話によって、僕がほかからも月桂冠を受けないとは限らないよ、』と答えたユースタスは、つやつやした巻毛に月桂冠をつけて、本当に青年詩人のようだった。『僕はこれから休みの間、暇を見て、それから大学に帰ってからも、夏の学期中、今までの話を原稿に書いて、出版するつもりだ。去年の夏、バークシアで知合いになった人だが、出版もやれば、詩も書くというヂェイ・ティー・フィールヅ氏は、一目で僕の話のすぐれた価値が分るだろう。彼はビリングズにでも挿画を描かして、ティックナ社といったような有名な出版書肆から、それを立派に世に出してくれると思うんだ。今から五箇月もしたら、僕はきっと、現代の大家の中に数えられてるね!』 『かわいそうに!』とプリムロウズは半分ひとりごとのように言った。『彼は当てがはずれて、どんなにがっかりするでしょう!』  も少し下へおりて行くうちに、熊公が吠えはじめた。すると先輩のベンがもっと重みのある声でそれに応えた。彼等はまもなく、その感心な老犬が、ダンデライアンとスウィート・ファーンとカウスリップとスクォッシュ・ブロッサムとを、油断なく見張っているのを見た。それらの小さな子供達は、すっかり疲れもなおって、チェッカベリ摘みをはじめていたのだが、みんながおりて来たので、迎いに登って来た。こうしてまた一しょになると、みんなそろって、ルーサ・バトラさんとこの果樹園を抜けて丘をおりて、大急ぎでタングルウッドへ帰って行った。

「ワンダ・ブック――少年・少女のために――」ホーソーン(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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