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火の柱(木下尚江)のあらすじ・登場人物

非戦を貫く社会主義者

  • 社会
  • 心理

木下尚江 1904年(明治37年)1月 「毎日新聞」

文字数
113,481字
読了目安
約3時間47分
表記
新字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

日露開戦を目前にした東京。社会主義者でキリスト教徒の篠田長二は、新聞で非戦論を唱え、貧しい人々の側に立つ。彼を疎む成金・山木剛造の娘の梅子は、強いられる縁談に抗いながら、篠田に心を寄せていく。教会の除名、労働組合での中傷、警察の探偵と、篠田を取り巻く包囲は狭まる。明治の社会主義運動と信仰を背景にした、木下尚江の代表的な社会小説。

あらすじ

明治三十六年の秋、日露開戦の気運が高まる東京。社会主義者でキリスト教徒の篠田長二は、同胞新聞の主筆として非戦論を唱え、貧民や労働者の味方として知られていた。彼を快く思わない成金の山木剛造は、牧師の長谷川に圧力をかけて、篠田を永阪教会から除名させる。ところが剛造の娘・梅子は、継母の目を避けながら、篠田の高い志に静かな思慕を寄せていた。継母のお加女と、剛造が頼る投機師の大洞利八は、海軍大佐の松島との縁談を梅子に押し付けようとするが、梅子は独身主義を盾に沈黙を貫く。篠田は、芸妓殺しの罪で捕らわれた職工兼吉の母と、元芸妓の花吉(お花)を自宅に引き取って世話をし、教会の外で慈善の実を行う。だが、これを逆手に取った中傷が広まる。篠田が山木家の持参金に目がくらんで資本家に降ったという噂が組合に流れ、鍛工組合の臨時総会では調査委員の設置が決まる。新聞には「露探」の疑いまで書き立てられる。裏では警察の課長・川地が、記者の吾妻を探偵として篠田の身辺に潜り込ませており、無実を知った吾妻は良心の呵責に苦しむ。一方、大洞の別荘に呼び出された梅子は、酒の席で松島に迫られ、必死の抵抗の末に彼の左眼を傷つけて逃れる。この事件を境に、梅子は父に外出を禁じられる。そこへ篠田の拘引が近いと耳にした梅子は、雪の夜に篠田を訪ね、胸に秘めた思いを打ち明ける。篠田は彼女の手を握り、「純潔の心」を捧げると答えるが、身を隠すようにという勧めは受け入れない。九州炭山の坑夫同盟の破壊を告げる電報が届いた翌朝、日露の国交断絶が報じられるなか、篠田は「夜は火の柱と現はれて導き玉ふ」と語り、拘引状を携えた警官に連れられて檻車で去っていく。

登場人物

冒頭部(原文より)

時は九月の初め、紅塵飜へる街頭には尚ほ赫燿と暑気の残りて見ゆれど、芝山内の森の下道行く袖には、早くも秋風の涼しげにぞひらめくなる、

「火の柱」木下尚江(青空文庫)

末尾部(原文より)

篠田は徐ろに其背を撫しつ、「君、忘れたのか――一粒の麦種地に落ちて死なずば、如何で多くの麦生ひ出でん――沙漠の旅路にも、昼は雲の柱となり、夜は火の柱と現はれて、絶えず導き玉ふ大能の聖手がある、勇み進め、何を泣くのだ」 轍の迹のみ雪に残して、檻車は遂に彼を封して去れり。

「火の柱」木下尚江(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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