野分(夏目漱石)のあらすじ・登場人物
世に容れられぬ理想主義者
- 社会
- 心理
- 文字数
- 93,503字
- 読了目安
- 約3時間7分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
- 舞台
- 東京都
この作品について
夏目漱石が1907年(明治40年)1月、『ホトトギス』に発表した中編。題の野分は、秋の暴風をいう。地方の中学を追われても理想を捨てず、貧しさのなかで人格や道徳を説き続ける文学者・白井道也と、貧しいながら志を抱く青年・高柳、裕福な境遇の中野が登場する。演説や講演の場面が多く、金と享楽に傾く世の風潮への批判が、道也の言葉に託して語られる。思想を前面に出した、文明批評の色が濃い作品である。
あらすじ
白井道也は文学者である。理想を曲げられぬ性格のため、赴任した地方の中学を次々と追われ、去年ようやく東京へ舞い戻ったものの、貧しい暮らしのなかで妻とともに世間の冷遇に耐えている。それでも道也は、金や地位に流される風潮を憂い、人格の大切さを説く文章を書き続ける。一方に、肺を病みながら貧困のうちに志を抱く文学青年・高柳周作と、裕福で快活なその親友・中野輝一がいる。高柳は世の不公平や自らの不遇に鬱屈を募らせ、才を認められぬ焦りに苦しんでいる。やがて高柳は、かつて自分たちが越後の中学で追い出した教師こそ道也であったと知り、その気高い生き方に心を打たれる。転地療養の費用にと中野から受け取った金を、高柳は道也の人格論の原稿を買い取る形で差し出し、「私はあなたの弟子です」と告げて、夜の闇の中へ去っていくのだった。
登場人物
- 白井道也 理想を曲げず地方の中学を追われた文学者。貧窮のなかで人格論を説き続ける
- 高柳周作 肺を病む貧しい文学青年。道也の生き方に感化される
- 中野輝一 高柳の裕福で快活な親友
冒頭部(原文より)
白井道也は文学者である。八年前大学を卒業してから田舎の中学を二三箇所流して歩いた末、去年の春飄然と東京へ戻って来た。
「野分」夏目漱石(青空文庫)
末尾部(原文より)
愕然たる道也先生を残して、高柳君は暗き夜の中に紛れ去った。彼は自己を代表すべき作物を転地先よりもたらし帰る代りに、より偉大なる人格論を懐にして、これをわが友中野君に致し、中野君とその細君の好意に酬いんとするのである。
「野分」夏目漱石(青空文庫)
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