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竹の木戸(国木田独歩)のあらすじ・登場人物

竹の木戸ごしの二つの家

  • 社会
  • 心理

国木田独歩 1908年(明治41年) 「中央公論」

文字数
12,284字
読了目安
約25分
表記
新字新仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

国木田独歩が晩年の1908年(明治41年)、「中央公論」に発表した短編小説。作者の死の直前に書かれた、自然主義文学を代表する一編である。東京郊外の会社員・大庭家と、竹の木戸ひとつ隔てて暮らす貧しい植木屋夫婦。厳しい寒さと窮乏のなかで、植木屋の妻お源が大庭家の炭に手を伸ばす。心優しい主人の温情をもってしても埋めきれない暮らしの隔たりを、感傷を排した筆致で静かに描く。

あらすじ

東京郊外に住む温厚な会社員・大庭真蔵の一家の隣、生垣一つ隔てた物置同然の小屋に、貧しい植木屋の磯吉・お源夫婦が越してくる。井戸を使うために夫婦は大庭家の生垣を開けて粗末な竹の木戸をこしらえるが、しっかり者の女中お徳は「盗人の入口を造るようなもの」と渋る。炭の値が高いその冬、暮らしに詰まったお源は、大庭家の軒下に積まれた炭を、木戸を通って井戸へ行くたびにひそかに盗むようになる。ある日、主人の真蔵はお源が炭を手にしているところを目にするが、心優しい彼は問い詰めもせず、誰にも言わずにおこうと決める。だが女中のお徳が炭に印をつける罠を仕掛けて盗みを突き止め、家中に知れ渡ってしまう。大庭家は事を荒立てまいと炭を屋内へ移し、黙って知らぬふりを通すことにする。露見を恐れたお源は井戸へ出られなくなり、その夜、夫に甲斐性のなさを責め立てる。いたたまれず飛び出した磯吉は、当てつけのように炭屋から炭俵をまるごと盗んで帰る。翌朝、その炭が盗品だと知れる場に居合わせたお源は、羞恥と恐怖に耐えきれず、土間の梁に細帯をかけて首を吊ってしまう。二日後、竹の木戸は取り払われて生垣はもとに戻り、二月ののち磯吉は別の女を女房に、相変わらず豚小屋同然の家に暮らしていた。善意も温情も届かぬ貧の底の非情を、独歩が静かに描いた絶筆に近い一編である。

登場人物

冒頭部(原文より)

 大庭真蔵という会社員は東京郊外に住んで京橋区辺の事務所に通っていたが、電車の停留所まで半里以上もあるのを、毎朝欠かさずテクテク歩いて運動にはちょうど可いと言っていた。温厚しい性質だから会社でも受が可かった。  家族は六十七八になる極く丈夫な老母、二十九になる細君、細君の妹のお清、七歳になる娘の礼ちゃんこれに五六年前から居るお徳という女中、以上五人に主人の真蔵を加えて都合六人であった。

「竹の木戸」国木田独歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 お徳は老母からも細君からも、みっしり叱られた。お清は日の暮になってもお源の姿が見えないので心配して御気慊取りと風邪見舞とを兼ねてお源を訪ねた。内が余り寂然しておるので「お源さん、お源さん」と呼んでみた。返事がないので可恐々々ながら障子戸を開けるとお源は炭俵を脚継にしたらしく土間の真中の梁へ細帯をかけて死でいた。  二日経って竹の木戸が破壊された。そして生垣が以前の様に復帰った。  それから二月経過と磯吉はお源と同年輩の女を女房に持って、渋谷村に住んでいたが、矢張豚小屋同然の住宅であった。

「竹の木戸」国木田独歩(青空文庫)

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