鹿狩り(国木田独歩)のあらすじ・登場人物
十二歳の少年が見た冬の鹿狩り
- 家族
- 心理
- 文字数
- 7,499字
- 読了目安
- 約15分
- 表記
- 新字新仮名
- 種別
- 小説
この作品について
1898年(明治31年)8月、『家庭雑誌』に発表された国木田独歩の短編。十二歳の「僕」は、銀行頭取の叔父に誘われ、町の名士たちの鹿狩りに見物人として加わる。冬の夜に港から船を出し、明け方に岬の浦へ上陸して、猟師や猟犬とともに山へ入る一日を、少年の目でいきいきと描く。僕がとりわけ慕うのは、一行のなかで一番声が大きく、一番元気な今井の叔父さんだった。大人になった語り手が、少年の日の出来事を記念として語る形をとる。
あらすじ
十二歳の僕は、中根の叔父に誘われて鹿狩りの見物に行くことになる。十二月三日の夜、銀行の頭取である叔父や判事、郡長ら町の上流の人々十一人が鉄砲を手に集まり、山賊のような姿で町を出て、かの字港から船でつの字崎へ向かう。一行のなかでいちばん声が大きく元気で肥った今井の叔父さんが、僕は一番気に入っていた。明け方、さの字浦に上陸し、猟師六人と猟犬十頭ばかりと合流して山に入る。僕は今井の叔父さんの持ち場について鹿を待つ。昼すぎ、弁当と酒のあと叔父さんが草の上でいびきをかいて寝てしまったとき、小藪の陰から大きな角を持つ鹿が近づいてくる。叔父さんを起こせば鹿が逃げると思った僕は、そっと銃を取って引き金を引き、反動で後ろへ倒れる。飛び起きた叔父さんは倒れた大鹿を見て、目に涙を浮かべて僕に抱きついた。その日の獲物六頭のうち、僕の鹿がいちばん大きかった。帰り道、判事さんは渓流で黒い小鳥を撃ち、そっと叔父さんに渡す。二か月ほどのち、今井の叔父さんの独り息子で、四、五年前から気が狂っていた鉄也さんが鉄砲で自殺した。あの岩烏も狂気の薬にするためのものだった。望みを絶たれた叔父さんのもとへ、やがて僕は養子にもらわれる。僕はその後も義父の猟の伴をし、岩烏を見つけると義父の機嫌を損ねないようそっと石を投げて追い払った。人がよく、剛胆で、情け深く、気の毒な義父の十三年忌に、僕はこの鹿狩りの物語を語ったのだった。
登場人物
- 僕(徳さん) 語り手。十二歳で鹿狩りの見物に加わる
- 今井の叔父さん 一行でいちばん元気な肥った男。僕のお気に入り
- 中根の叔父 銀行の頭取。僕を鹿狩りに誘う
- 岡 判事。一行の一人
冒頭部(原文より)
『鹿狩りに連れて行こうか』と中根の叔父が突然に言ったので僕はまごついた。『おもしろいぞ、連れて行こうか、』人のいい叔父はにこにこしながら勧めた。 『だッて僕は鉄砲がないもの。』 『あはははははばかを言ってる、お前に鉄砲が打てるものか、ただ見物に行くのだ。』 僕はこの時やっと十二であった。叔父が笑うのも道理で、鹿狩りどころか雀一ツ自分で打つことはできない、しかし鹿狩りのおもしろい事は幾度も聞いているから、僕はお供をすることにした。
「鹿狩り」国木田独歩(青空文庫)
末尾部(原文より)
そして僕は今井に養子にもらわれた。叔父さんが僕のおとっさんになった、僕はその後何度もお伴をして猟に行ったが、岩烏を見つけるとソッと石を拾って追ってくれた、義父が見ると気嫌を悪くするから。 人のいい優しい、そして勇気のある剛胆な、義理の堅い情け深い、そして気の毒な義父が亡くなってから十三年忌に今年が当たる、由って紀念のために少年の時の鹿狩りの物語をしました。
「鹿狩り」国木田独歩(青空文庫)
原文を読む
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