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半日(森鴎外)のあらすじ・登場人物

母と妻のあいだで過ごす半日

  • 家族
  • 心理

森鴎外 1909年(明治42年)3月 「昴」

文字数
16,571字
読了目安
約33分
表記
旧字旧仮名
種別
小説
舞台
  • 東京都

この作品について

1909年(明治42年)3月、創刊まもない文芸雑誌「昴」の第三号に発表された短編。孝明天皇祭の朝、文科大学教授の高山博士の家で過ごす、およそ半日の出来事を描く。博士の母君と妻は同じ家に暮らしながら口もきかず、博士はその間に立って身動きがとれない。湯の支度への小言、家計の主導権、嫉妬、遺言をめぐる言い争いが、博士の冷静な観察と理屈で語られる。鴎外の妻と母との関係が、題材のもとになったと言われる。心理学や西洋の語彙を交えた分析的な語り口で、家庭内の波風を一定の距離から見つめている。

あらすじ

一月三十日、孝明天皇祭の朝。文科大学教授・高山博士は、母君、妻、七つの娘の玉ちゃんと暮らしている。台所で湯が沸かない小言を言う母君の声に、妻は「いつもあの声で玉が目を醒ましてしまう」と癇を立てる。母君は貧しい中で博士を学ばせた意志の強い人で、妻は大審院長だった父に甘やかされた気ままな娘であり、妻は姑と同席せず、食事も別に取る。博士は参内の支度を中途にして所労届を出し、家に残る。妻は「玉ちゃんを連れてどこかへ行く」と言い出し、やがて家計の主導権や遺言のことから言い争いになる。博士は妻の振る舞いを嫉妬や神経の変調ではないかと冷静に分析しつつ、母君が家のためと信じてする勘定を取り上げるべきではないと考える。やがて妻は黙り込み、台所からは昼の支度の音が聞こえてくる。博士は、また昼の食事に嫌われに出てくる母君の姿を思う。

登場人物

冒頭部(原文より)

 六疊の間に、床を三つ並べて取つて、七つになる娘を眞中に寢かして、夫婦が寢てゐる。宵に活けて置いた桐火桶の佐倉炭が、白い灰になつてしまつて、主人の枕元には、唯ゞ心を引込ませたランプが微かに燃えてゐる。その脇には、時計や手帳などを入れた小葢が置いてあつて、その上に假綴の西洋書が開けて伏せてある。主人が讀みさして寢たのであらう。

「半日」森鴎外(青空文庫)

末尾部(原文より)

無論精神病者とは認められまい。併し眞の精神病者と健康人との間に、限界状態といふやうなものがありはすまいか。若し又精神の變調でないとすれば、心理上に此女をどう解釋が出來よう。孝といふやうな固まつた概念のある國に、夫に對して姑の事をあんな風に云つて何とも思はぬ女がどうして出來たのか、西洋の思想から見ても、母といふものは神聖なものになつてゐるから、夫に對して姑を侮辱しても好いと思ふ女は先づあるまい。東西の歴史は勿論、小説を見ても、脚本を見ても、おれの妻のやうな女はない。これもあらゆる値踏を踏み代へる今の時代の特有の産物か知らんと、博士はこんな風な事を思つてゐる。  その中に臺所の方でこと/\と音がして來る。午の食事の支度をすると見える。今に玉ちやんが、「papa, 御飯ですよ」と云つて、走つて來るであらう。今に母君が寂しい部屋から茶の間へ嫌はれに出て來られるであらう。

「半日」森鴎外(青空文庫)

名文

六疊の間に、床を三つ並べて取つて、七つになる娘を眞中に寢かして、夫婦が寢てゐる。

鴎外『半日』の書き出し。博士の一家の静かな朝の寝間から始まり、やがて妻と姑の不和に満ちた半日が描かれていく。

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原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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