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画の悲み(国木田独歩)のあらすじ・登場人物

画で競い合った二人の少年

  • 青春
  • 心理

国木田独歩 

文字数
4,772字
読了目安
約10分
表記
新字新仮名
種別
小説

この作品について

国木田独歩の短編。岡本某が少年時代を回想して語る形をとる。画が何よりも好きで学力も抜群の「自分」は、温順で人気のある一年上の少年志村にだけは画で勝てず、全校一の名誉を奪われていた。学校の製作物展覧会で今度こそ志村を負かそうと、借馬屋の厩に通って馬の頭を描き上げるが、当日会場に並んだ志村の作品は思いもよらないものだった。対抗心から始まった二人の少年の関係を、故郷の川辺や中学へ通う七里の山道の風景とともに描いている。

あらすじ

岡本某は少年時代を語りだす。自分は画が何よりも好きで、数学とともに同級生に負けない自信があったが、全校一の腕白でもあった。ところが画では、学力は二流以下ながら天才と崇められる志村という一年上の少年に全校一の名誉を奪われていた。色白で柔和な志村に人気が集まり、高慢な自分の画はさほどほめられないのが不平だった。生徒の製作物の展覧会で、自分は志村に打ち勝とうと借馬屋の厩に幾度も通い、馬の頭を描き上げる。しかし当日、並んで掲げられた志村の画はチョークで描いたコロンブスの肖像で、画題も色彩も段違いだった。自分は学校を飛び出し、川原で泣きわめいて石を投げつけたが、やがて自分もチョークで描いてみようと思い立ち、チョークを買って水車を写生しに出る。川原にはすでに志村が来て水車を描いていた。自分は志村その人を写生しはじめ、描くうちに忌々しい気持ちは消えてしまう。振り向いた志村がにっこり笑い、チョーク画は東京から帰った奥野さんに習ったと話すと、二人は連れ立って学校へ戻った。以来二人は無二の友となり、中学に進んでも、寄宿舎から村までの七里の山道をともに写生しながら歩いた。数年後、志村は中学を退いて村に帰り、自分は東京へ遊学して音信も絶えた。二十歳のとき久しぶりに帰郷した自分は、志村が十七歳で病死していたことを知る。画板を提げて、かつて二人でよく写生した野末に出た自分は、まばゆい夏の景色のなかで思わず泣いた。

登場人物

冒頭部(原文より)

 画を好かぬ小供は先ず少ないとしてその中にも自分は小供の時、何よりも画が好きであった。(と岡本某が語りだした)。  好きこそ物の上手とやらで、自分も他の学課の中画では同級生の中自分に及ぶものがない。画と数学となら、憚りながら誰でも来いなんて、自分も大に得意がっていたのである。しかし得意ということは多少競争を意味する。自分の画の好きなことは全く天性といっても可かろう、自分を独で置けば画ばかり書いていたものだ。

「画の悲み」国木田独歩(青空文庫)

末尾部(原文より)

 自分は久しぶりで画板と鉛筆を提げて家を出た。故郷の風景は旧の通りである、しかし自分は最早以前の少年ではない、自分はただ幾歳かの年を増したばかりでなく、幸か不幸か、人生の問題になやまされ、生死の問題に深入りし、等しく自然に対しても以前の心には全く趣を変えていたのである。言いがたき暗愁は暫時も自分を安めない。  時は夏の最中自分はただ画板を提げたというばかり、何を書いて見る気にもならん、独りぶらぶらと野末に出た。かつて志村と共に能く写生に出た野末に。  闇にも歓びあり、光にも悲あり、麦藁帽の廂を傾けて、彼方の丘、此方の林を望めば、まじまじと照る日に輝いて眩ゆきばかりの景色。自分は思わず泣いた。

「画の悲み」国木田独歩(青空文庫)

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