一夕観(北村透谷)のあらすじ・登場人物
星空の下で内面を見つめる
- 文字数
- 1,213字
- 読了目安
- 約2分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
北村透谷の随想。1893年(明治26)11月、『評論』に発表。秋の夜、星空の下で自分の小ささと宇宙の大きさを見つめ、内なるものを見つめ直す。透谷晩年の、静かで深い思索を示す。
あらすじ
「ある宵われにあたりて横はる。ところは海の郷、秋高く天朗らかにして、よろづの象、よろづの物、凛乎として我に迫る」と始まる。月はまだ昇らず、仰ぐ蒼穹に無数の星が紛糾している。自分の五尺の身を見、さらに内側を見る。力なく能なく弁なく気なき自分に対して、自然は真率でない自分を笑うかのようだ。結びは、流れ星はやがて消え、悠々たる天地は限りなく、大いなる歴史の一枚を前に、ただ茫然とするしかないという述懐になる。
冒頭部(原文より)
其一 ある宵われにあたりて横はる。ところは海の郷、秋高く天朗らかにして、よろづの象、よろづの物、凛乎として我に迫る。恰も我が真率ならざるを笑ふに似たり。恰も我が局促たるを嘲るに似たり。恰も我が力なく能なく弁なく気なきを罵るに似たり。渠は斯の如く我に徹透す、而して我は地上の一微物、渠に悟達することの甚はだ難きは如何ぞや。
「一夕観」北村透谷(青空文庫)
末尾部(原文より)
われは自から問ひ、自から答へて安らかなる心を以て蓬窓に反れり。わが視たる群星は未だ念頭を去らず、静かに燈を剪つて書を読まんとするに、我が心はなほ彼にあり。我が読まんとする書は彼にあり。漠々たる大空は思想の広ろき歴史の紙に似たり。彼処にホーマーあり、シヱークスピーアあり、彗星の天系を乱して行くはバイロン、ボルテーアの徒、流星の飛び且つ消ゆるは泛々たる文壇の小星、吁、悠々たる天地、限なく窮りなき天地、大なる歴史の一枚、是に対して暫らく茫然たり。 (明治二十六年十一月)
「一夕観」北村透谷(青空文庫)
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