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十二支考(鼠)(南方熊楠)のあらすじ・登場人物

鼠の嫁入りと、名を呼ばぬ風習

南方熊楠 1924年(大正13年)1月 「太陽」

文字数
35,464字
読了目安
約1時間11分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

「十二支考」のうち子年にあたる「鼠に関する民俗と信念」。連作の掉尾を飾る一編である。十二支と十二禽の関係がいつ支那で成立したかを星宿の位置から論証する堅実な考証で始まり、正月に鼠の嫁入りを祝う支那各地の風習、名を呼ぶことを忌む世界各地の信仰へと筆を進める。嫌われ者の鼠にも神物として敬われた例があることを示して、大作を締めくくる。

あらすじ

明けまして子年となると、皆が一斉に鼠を連想する——熊楠はそう書き起こし、まず十二支に十二禽を配当した習わしの起原を追う。趙翼は後漢に始まると論じたが、『淮南子』や『荘子』の注、そして星宿の位置の移動から推せば、周の時代にすでに定まっていたはずだと説く。十二禽という具体的な名から離れて、子丑寅卯という抽象的な象徴を作り上げたことこそ支那人の大出来であり、暦占や編史を進めるのに非常な力を添えたと評価する。続いて、正月に鼠の嫁入りを祝う支那各地の風習が紹介される。この夜は鼠のことを一切口にせず、灯を消して邪魔をしない土地もある。日本でも正月三が日、鼠を「嫁が君」と呼び替えた。ここから話は、動物や神の実名を呼ぶことを忌む信仰へと広がる。スウェーデンで狼を「黙った者」「鼠色の足」と呼び、熊を「老人」「十二人力」と呼ぶこと、古代エジプト人が神も鬼神も名を秘したこと、日本の中世で女の実名が伝わらないこと——。結びに熊楠は、鼠ほど嫌い悪まれるものは少ないが、これを食って生きる人も多く、神物として伝説を生じた民もあり、鼠もまったく無益な物ではないと判る、と述べている。

冒頭部(原文より)

 明けまして子年となると、皆様一斉に鼠を連想する。子の年は鼠、丑の年は牛と、十二支に十二禽を割り当る事、古く支那に起って、日本・朝鮮・安南等の隣国に及ぼし、インドやメキシコにも多少似寄った十二物を暦日に配当した事あれど、支那のように方位に配当したと聞かぬ。

「十二支考(鼠)」南方熊楠(青空文庫)

末尾部(原文より)

 およそ鼠ほど嫌い悪まるる物は少ないが、段々説いた所を綜合すると、世界の広き、鼠を食って活き居る人も多く、迷信ながらもこれを神物として種々の伝説物語を生じた民もあり。鼠も全く無益な物でないと判る。

「十二支考(鼠)」南方熊楠(青空文庫)

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