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十二支考(鶏)(南方熊楠)のあらすじ・登場人物

元日に鶏を磔にした、その理由

南方熊楠 1921年(大正10年)1月 「太陽」

文字数
65,355字
読了目安
約2時間11分
表記
新字新仮名
種別
随筆

この作品について

「十二支考」のうち酉年にあたる「鶏に関する伝説」。1921年(大正10年)「太陽」に五回にわたって連載された。正月に鶏を門に磔にして悪気を祓ったという支那の古い風習の考証から始まり、鶏卵をめでたいものとする東西の俗信、鶏をめぐる神話と説話を渉猟する。末尾では家鶏の原種である四種の野生の藪鶏を博物学者らしく詳述し、『和漢三才図会』の記述と照らし合わせている。

あらすじ

『荊楚歳時記』の註に引く『問礼俗』によれば、正月一日を鶏の日とし、二日を狗、三日を羊、四日を猪、五日を牛、六日を馬、七日を人の日とした。元旦には鶏を門に画き、その日は鶏を殺さない。二日には人と鶏に馳走をした——熊楠はこうした記述を丹念に並べていく。だが古くは逆に、元旦に鶏を磔にして門に懸け、悪気を祓ったのだという。羊の頭を門に懸ける風習と並び、これは土の気が上昇して草木が萌え動くとき、百草を齧む羊と五穀を啄む鶏を殺して生気を助けるためだと説明されていた。やがて鶏を磔にする代わりに戸口へ鶏の絵を貼るようになる。続いて話は鶏卵に移り、元旦に卵を呑んで身体を固める「錬形」の法、西洋で復活祭に卵を贈り合う風習、金の卵から世界が始まるという古ギリシア・インドの創世神話へと広がる。梵語のアンダが卵と睾丸の双方を意味することから、支那の卵にまつわる俗語まで拾い上げる筆の運びは奔放そのものである。結びには家鶏の原種にあたる赤藪鶏・灰色藪鶏・シンガリース藪鶏など四種の野生鶏を詳しく記述している。

冒頭部(原文より)

 晋の宗懍の『荊楚歳時記』註に魏の董の『問礼俗』に曰く、正月一日を鶏と為し、二日を狗と為し、三日を羊、四日を猪、五日を牛、六日を馬、七日を人と為す。正旦鶏を門に画き、七日人を帳に帖す、今一日鶏を殺さず、二日狗を殺さず、三日は羊、四日は猪、五日は牛、六日は馬を殺さず、七日刑を行わず(人を殺さず)またこの義なり云々。

「十二支考(鶏)」南方熊楠(青空文庫)

末尾部(原文より)

 野生の鶏種々あるがまずは四種とする。英語で総称してジャングル・ファウル(藪鶏)と呼ぶ。第一赤藪鶏は疑いなく一切家鶏の原種で、前インドより後インドの森林と竹藪に棲み、フィリッピン島近きチモン島にもあり。……熊楠案ずるに、『和漢三才図会』に家鶏日々一卵ずつ生むをその都度取り去れば幾つともなく生み続けて数定まらず、もし取らずに置けば十二卵を生んでやむとあるに拠あるごとし。

「十二支考(鶏)」南方熊楠(青空文庫)

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