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怪力(泉鏡花)のあらすじ・登場人物

同じ話を二つの文章で読む

泉鏡花 1909年(明治42年)6月 「新小説」

文字数
4,315字
読了目安
約9分
表記
新字旧仮名
種別
随筆

この作品について

泉鏡花の随筆風の一編。怪力の盲人が大力の武士としっぺい張り(指で打つ力くらべ)をする、同じ型の二つの話を、講釈の武勇談と好事家の随筆の怪談として読み比べ、同じ筋でも文章の力で真実味がどう変わるかを示す。明治42年(1909)6月から7月、「新小説」に掲載された。

あらすじ

怪力の盲人が登場する話が二つあり、一つは講釈の武勇談、一つは随筆に記された怪談だと筆者は説き、二つを読み比べて文章の力の違いを見せる。講釈では、越前の黒坂備中が足羽川のほとりで、大岩を押し転がす按摩に出会い、しっぺいくらべをするが、按摩は鐙を指で凹ませるだけで終わる。随筆では、奥州会津の諏訪越中が闇川橋の座頭と出会い、木曾の掛橋の歌などを聞く優美な導入ののち、野寺の観音堂で力くらべになる。座頭が張ったしっぺいは鐙を砕き、越中が逃げると、雲が起こって座頭は消える。筆者は、筆の用意の深さによって怪談の方が事実らしく聞こえると評する。

冒頭部(原文より)

 孰れが前に出来たか、穿鑿に及ばぬが、怪力の盲人の物語りが二ツある。

「怪力」泉鏡花(青空文庫)

末尾部(原文より)

 越中密に立つて鐙をはづし、座頭がしつぺいを鐙の鼻にて受くる。座頭乗かけ声をかけ、 「曳や、」 とはつしと張る。鐙の雉子のもゝのまがりめ二ツ三ツに張砕けたり。 「あつ、」 と越中、がたり鐙を投り出し、馬にひらりと乗るより疾く、一散に遁げて行く。座頭腹を立て、 「卑怯なり何処へ遁ぐる。」 と大音あげ、追掛しが忽ちに雲起り、真闇になり、大雨降出し、稲光烈しく、大風吹くが如くなる音して座頭はいづくに行しやらむ――と言ふのである。前の講釈のと読較べると、彼の按摩が後に侍に取立られたと云ふ話より、此天狗か化物らしい方が、却つて事実に見えるのが面白い。

「怪力」泉鏡花(青空文庫)

原文を読む

原文は青空文庫で公開されています(アプリからも同じ本文をダウンロードして縦書きで読めます)。

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