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木枯紀行(若山牧水)のあらすじ・登場人物

木枯らしの中の十七日間の山旅

若山牧水 1923年(大正12年)

文字数
13,556字
読了目安
約27分
表記
新字旧仮名
種別
随筆
舞台
  • 埼玉県
  • 長野県

この作品について

歌人・若山牧水の紀行文。大正十二年(1923年)の晩秋、御殿場から籠坂峠を越え、甲州から秩父の山々を分け入り、信州境の峠を経て秩父谷の奥へと下る十七日間の山旅を綴る。木枯らしの吹きすさぶ枯野と深い渓谷、荒々しい山肌を背景に、道々で出会う人々や酒との触れ合いを、牧水らしい淡々とした筆致で写している。旅と酒をこよなく愛した歌人の面目が、初冬の山旅のなかに色濃くにじむ一篇である。

あらすじ

十月二十八日、若山牧水は着茣蓙を羽織り、御殿場から独り旅立つ。籠坂峠の険しい登りで酒に酔い、萱を折り敷いてまどろむうち、火傷を負った異相の男に呼び起こされる——そんな道中の一齣から旅は始まる。木枯らしの吹く枯野と、雲に隠れて荒々しい富士の裾野を眺めながら、牧水は甲州から秩父の山中へと足を運んでゆく。深い渓間に伝わる落武者の伝説を老爺から聞き、断崖の中途に引っ懸かったような山村栃本に宿を借り、荒川の上流を見下ろしては、そこに暮らす人々の厳しい生活に目を留める。十一月十一日、案内の老爺と別れて独り三峰山に登り、中津川と荒川の落ち合う所をたずねたのち、牧水は東京を経て、十七日目にようやく沼津の家へ帰り着く。旅と酒をこよなく愛した歌人が、初冬の山旅の孤独と情趣を、飾らぬ言葉で写しとった紀行である。

冒頭部(原文より)

――ひと年にひとたび逢はむ斯く言ひて   別れきさなり今ぞ逢ひぬる――  十月二十八日。  御殿場より馬車、乗客はわたし一人、非常に寒かつた。馬車の中ばかりでなく、枯れかけたあたりの野も林も、頂きは雲にかくれ其処ばかりがあらはに見えて居る富士山麓一帯もすべてが陰欝で、荒々しくて、見るからに寒かつた。

「木枯紀行」若山牧水(青空文庫)

末尾部(原文より)

 十一月十一日。  爺さんはまた七里の森なかの峠を越えて梓山村へ帰つてゆくのである。わたしは一人、三峰山に登つた。そして其処を降つて、昨日尾根から見損つた中津川が、荒川に落ち合ふ所を見度く、二里ばかり渓沿ひに遡つて、名も落合村といふまで行つて泊つた。  翌日は東京に出、ルックサックや着茣蓙を多くの友達に笑はれながら一泊、十七日目だかに沼津の家に帰つた。

「木枯紀行」若山牧水(青空文庫)

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