黒猫(薄田斬雲)のあらすじ・登場人物
轢かれた子猫と人々
- 文字数
- 2,223字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 新字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
薄田泣菫の短い随筆風の作品。『猫の微笑』(1927年)所収。大阪の場末で見かけた、荷車に轢かれた黒い子猫をめぐる出来事を、静かに語る。
あらすじ
語り手は六月のむしむしする午後、大阪の場末の小学校裏の町で、荷車の轍に轢き倒された真っ黒な子猫を見つける。荷車引きの老人が婦人に「お宅の飼猫だすかいな」と詰め寄り、婦人は「宅の猫ぢやありません」と否定する。やがて場面は堀端に移り、白い猫の包みが堀の水に投げ込まれて、浮きつ沈みつ流れていくところで終わる。
冒頭部(原文より)
「奥さん、謝れなら謝りまんが、それぢやお宅の飼猫だすかいな、これ」 荷車曳きの爺さんは、薄ぎたない手拭で、額の汗を拭き拭き、かう言つて、前に立つた婦人の顔を敵意のある眼で見返しました。二人の間には、荷車の轍に轢き倒された真つ黒な小猫が、雑巾のやうに平べつたくなつて横たはつてゐました。
「黒猫」薄田斬雲(青空文庫)
末尾部(原文より)
私は後を追ふともなしに車についてゆきました。路が横堀に出ると、爺さんは後に手を伸ばして手巾の包を取り上げるなり、堀の水を目がけてぽいとそれを投げおろしました。 白い猫の包は、碧い堀割の水に浮きつ沈みつ、しばらく流れてゐました。 〔昭和2年刊『猫の微笑』〕
「黒猫」薄田斬雲(青空文庫)
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