くさびら(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
梅雨に生える茸の怪
- 文字数
- 1,777字
- 読了目安
- 約4分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
末尾に大正12年(1923年)6月と記された短い随筆。梅雨に野山に生える茸の滑稽さと凄味を、筆者が過去に借家の畳へ茸が生えた体験、加賀・山中温泉の宿の逸話、能の狂言『茸』のやりとりを交えて語る。怖がりの筆者が茸に親しみを覚える様子が愉快。
あらすじ
内容の要旨。梅雨の野山にはさまざまな茸が生えるが、見る者には滑稽さとともに凄味がある。筆者は以前、麹町の借家の湿った八畳間の畳の縁に、雨だれに足が生えたような茸が並んで生えたことがあり、掃除してもまた出るので引っ越した。後に聞くと、加賀・山中温泉の宿では囲炉裏の灰から三本ずつ黒い茸が五日続けて生えたが、主人が動じずに抜き捨てて妖はやんだという話が『三州奇談』にある。能の狂言『茸』では、山伏が祈るほどに大茸が増え、最後は『取って噛もう』と山伏に迫る。筆者は臆病ながら茸の側が好きだと言い、紅茸は庭に植えたいほどだが、食べるのではないから茸よ、噛んでくれるなと結ぶ。
冒頭部(原文より)
御馳走には季春がまだ早いが、たゞ見るだけなら何時でも構はない。食料に成る成らないは別として、今頃の梅雨には種々の茸がによき/\と野山に生える。 野山に、によき/\、と言つて、あの形を想ふと、何となく滑稽けてきこえて、大分安直に扱ふやうだけれども、飛んでもない事、あれでなか/\凄味がある。
「くさびら」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
……中に、紅絹の切に、白い顏の目ばかり出して褄折笠の姿がある。紅茸らしい。あの露を帶びた色は、幽に光をさへ放つて、たとへば、妖女の艷がある。庭に植ゑたいくらゐに思ふ。食べるのぢやあないから――茸よ、取つて噛むなよ、取つて噛むなよ。……
「くさびら」泉鏡花(青空文庫)
原文を読む
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