真夏の梅(泉鏡花)のあらすじ・登場人物
梅干しを干す夏の物干し
- 文字数
- 4,712字
- 読了目安
- 約9分
- 表記
- 旧字旧仮名
- 種別
- 随筆
この作品について
泉鏡花が大正15年(1926)9月、雑誌『女性』に発表した随筆。梅干しを漬け、土用の丑の日に干す年中行事の様子を軸に、梅売りの声、京阪や各地の梅干しの味、女房が考案した団扇を使った蠅よけ、物干しに集まる雀など、家庭の夏の風景を軽やかな筆致で描いている。
あらすじ
(内容の要旨)梅売りの声が聞こえはじめる頃は、家庭の夏の初音である。気に入った梅を買い損ねて、八百屋から取り寄せるうちに質が落ちてしまうこともあり、筆者は昔、逗子で分けてもらった豊後梅の名品や、京阪の旅で食べた梅干しの味、各地の旅で出会った梅干しを思い出す。梅漬けは身を清めた女性がするべき仕事で、手荒に扱えばたちまち黴が浮く。筆者の家では近年、伊豆の修善寺から取り寄せた梅を漬け、水が上がったところで蓋を開けると、澄みきった水の清らかさに見とれる。土用の丑の日には、紫蘇と合わせた梅を二階の物干しで日に干す。蠅を避けるために家内が工夫したのは、棹竹に糸を渡して団扇を柄で結び、風が吹くたびに梅の上でひらひらと舞わせる仕掛けだった。その舞いぶりは下手なダンスよりもおもしろい。雀の仔が団扇の動きに驚いて飛び立つ様子や、団扇に描く絵柄のこと、夜の物干しに団扇の影を想像する夢想で筆を置く。
冒頭部(原文より)
梅や漬梅――梅や漬梅――は、……茄子の苗や、胡瓜の苗、……苗賣の聲とは別の意味で、これ、世帶の夏の初音である。さあ、そろ/\梅を買はなくては、と云ふ中にも、馴染の魚屋、八百屋とは違つて、此の振賣には、値段に一寸掛引があつて、婦たちが、大分外交を要する。
「真夏の梅」泉鏡花(青空文庫)
末尾部(原文より)
町内の、あの、大銀杏で、眞夜中に梟が鳴くと、 「誰さ?……」 と、ぴたりと、靜に其の團扇の面を。……稻妻遠き、物干にて。…… もしそれ、振袖をきせて、二三枚、花野に立たせて見るが可い、團扇は人を呼ぶであらう。
「真夏の梅」泉鏡花(青空文庫)
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